マイナスの名言を吐いたのですが、こんなとってつけたミソジニーを
真に受けるというか、真に受けたい人もいるみたいですね。
ヒトラーの「女に権力を与えた国は滅びる」の言葉にそうだそうだと同意してるやつらの記事を見た。だれが権力持っても国なんて滅亡と建国繰り返してるだけのものっすよ。まあ「男である自分は女より上」という幻想を強化する「名言」が美味しいんでしょうね。
— まつざわ (@mtzw1004) September 3, 2013
女性君主の時代に国が栄えた例は、カスティリャ王国のイザベラとか、
ハプスブルク帝国のマリア・テレジアとか、ロシア帝国のエカチェリーナ2世とか
いくつもあるのでして、反例を挙げるのはそれほど難しくないですね。
とくにロシア帝国は、国力がもっとも充実していた18世紀に、
エカチェリーナ1世、アンナ、エリザベータ、エカチェリーナ2世と、
4人の女帝が現れ、合計で67年と18世紀の3分の2の長さを
統治していたことは特筆に値すると思います。
女が権力を持つと国が衰えるように見えるとしたら、
ひとえにまわりの人たちが足を引っ張るからだろうと思いますよ。
女がトップに立つと甘く見たり不愉快だったりして、
すなおに従わなかったり、国益を顧みず独善的な要求をする
大臣や公務員や都市・自治体や国民も出てくるでしょう。
君主が女と見ると、周辺国が領土をかすめ取るチャンスと見て、
君主が男のときには絶対しないような、露骨な軍事介入をすることがあります。
さきに挙げたマリア・テレジアやブルゴーニュ公国の女公
「お姫さまのマリー」は、即位するとすぐに周辺国から攻撃を受けています。
これで領土が奪われると国力がきゅうに衰えることになります。
また、多くの国家で女性は権力の正統性に参画できず、
正統性からはずれたかたちでしか、権力に関われなかったこともありそうです。
フランスのポンパドゥール夫人はその例になると思います。
「権力の正統性が維持されれば国はうまく治まったのに、
正統性からはずれたところで政治が動くから国が乱れた」と思われると、
非正統的に権力に関わった女のせいにされることになります。
後世の人たちも「女が政治をやったらだめ」という
「はじめに結論ありき」で史観を作る傾向があると思います。
それゆえ君主が女で失政だったところはクローズアップされやすいし、
善政のときは「まわりの男がサポートしたから」ということにして、
女性君主の功績の印象が残らなくなるのでしょう。
そういえば、女が権力を持ったら統治が安定した例として、
日本には邪馬台国の卑弥子がいるのでした。
そして卑弥子のあと男の王を立てたら国が乱れたけれど、
ふたたび女王を立てたらまた統治が安定したのでしたね。
「日本の伝統」が大好きな人たちは、ヒトラーの言に同調する
ミソジニーたちに対して、徹底的に反撃する必要がありそうですね。