2019年05月24日

むかしは夫婦同姓でもない

「あの民俗学の人」は「庶民が名字を
名乗るようになったのは明治以降だから、
夫婦別姓は日本の伝統でない」と主張をしています。
そして「日本はむかしから夫婦同姓」と言っています。

江戸時代の庶民は名字を名乗らなかったことに
気がついているのは結構なことです。
ところがそれなら夫婦別姓はもちろん、
夫婦同姓も存在しないということです。
「夫婦別姓が日本の伝統でない」のと同じ理由で、
「夫婦同姓も日本の伝統でない」です。

 


「あの民俗学の人」は、日本の夫婦同姓は明治以後でも
120年続いたから日本の慣習、
と言っています。
でも上のツイートのような言いかたをするのは、
ここでの「むかし」は明治以前のはずです。

明治以前に存在しなければ、夫婦別姓は伝統ではないが、
夫婦同姓は伝統になりうるというなら、
「ダブルスタンダード」になります。


江戸時代までは明治以降とは苗字の概念が異なります。
「氏(うじ)」「姓(かばね)」「名字/苗字」は
べつのものあり、使われかたも異なっていました。

「氏」は一族の名前、「姓」は役職を表わしたもので、
大和朝廷の時代に始まる天皇からさずかる名前です。
「名字/苗字」は平安時代の後期に興ったサムライたちが
自分たちの一族の名前として自称したものです。

「夫婦別姓4部作」
「名字の歴史と夫婦別姓」

明治に入って近代的な家族制度を
法律で整えていく際、「氏(し)」「姓(せい)」
「名字/苗字」の区別がなくなり、
同じものを表わすようになります。
「姓」と「名字/苗字」の法律用語が「氏」というくらいです。

現代の意味での「夫婦同姓」「夫婦別姓」は、
基本的に明治以降の概念ということです。
そう考えた場合、「夫婦別姓」も「夫婦同姓」も
どちらも明治以前には存在しないので、
「日本の伝統」でないことになります。


明治の新政府は近代的な家族法や戸籍法を定め、
国民全員が名字を持つようにしました。
このときは「名字は出自を表す」が政府の見解であり、
「妻は生来の名字を名乗る」という通達を、
内務省は出していました。

「反対派の精神構造と思考構造 夫婦同姓は日本の伝統?」
「日本で夫婦同姓になった起源」


その後、不平等条約を撤廃するために、
欧米風の法整備が必要になっていきます。
その過程で欧米の家族法にならって、
日本で夫婦同姓を定めたのは1898年です。


「夫婦同姓120年の伝統」より前に、
夫婦別姓の時期が日本にはあったということです。
「むかしからある」ことを問題にするなら、
「夫婦同姓より夫婦別姓がさきだった」
「むかしの日本は夫婦別姓だった」です。


posted by たんぽぽ at 07:28| Comment(0) | 民法改正一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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