ジェンダー比について触れたツイートをご紹介しました。
いろんな国のジェンダー研究者が集まるドイツの学会で日本の性暴力の実態やどんな調査が必要かを報告したのだけど、東京大学の男女比率の偏りが酷いことや、東大女性が参加することを禁じられている(他大の女性のみ参加可の)サークルの存在を知って、オーディエンスからかなりの反響があった。
— 鈴木由真 (@yuma_s97) 2018年6月14日
ここに「なぜ東京大学なんて特定の大学の
特殊事情を取り上げるのか」などと言って、
突っかかってくるリプライがつきました。
どうして学会で特定の大学の特殊な状況を取り上げたのですか。 社会的に学歴のある女性が差別されているなんて言うことは無いと思いますが。 ただ一部の人がインカレの女性を僻んでいるだけでしょう。
— まるしぃ(セクト) (@marumaru5722) 2018年6月16日
なぜ東京大学を取り上げるのかですが、
日本でもっとも難関な大学ゆえに、入学するには教育に対して
多くのリソースを必要とするからです。
東京大学に女子学生が少ないことは、
日本では教育に関するリソースは、男子に比べて
女子には割かれにくいことを示すことになります。
それゆえ特別に関心を払うことになります。
東京大学を卒業した人は、そのあとエリートとなって、
社会を動かす立場につくことが多くなります。
東大生に女子が少ないということは、社会の意思決定の場に
女性が少なくなることになります。
意思決定の場に女性が少ないことは、
女性の立場や置かれている状況を理解した上での
意思決定をする人が少ないということです。
それは社会の意思決定が女性の立場や状況を
かえりみずに行なわれやすいことです。
ジェンダー差別が解消しない原因にもなることです。
この観点からも、東京大学の学生のジェンダー差を
問題にすることになります。
東京大学の学生に女子が少ないために
「男社会」ゆえの弊害が生じることがあります。
女子学生は他大学からしか参加できない
サークルの存在がツイートで挙げられていますが、
それはひとつの例だと言えます。
そして将来エリートとして、社会の意思決定に関わる
立場となる人たちが、このような「男社会」をあたり前と
考えるようになる可能性があることになります。
ジェンダー差別の温存や強化のもとにもなり、
きわめて問題視することだと言えます。
リプライしたかたは「社会的に学歴のある女性が
差別されているなんて言うことは無いと思いますが」
などとも言っています。
特定の環境にいるかぎられた女性であっても、
差別されているという事実がある以上、
それはジェンダー研究の対象になることです。
そしてそれは事実として指摘する必要があることです。
事実を直視して研究することで、なぜ東京大学という
「特定の環境」でジェンダー差別が起きるのか
原因がわかることになるし、また差別解消のための
具体的な対策を考えられるようになります。
さらにリプライしているかたは「ただ一部の人が
インカレの女性を僻んでいるだけでしょう」とも言っています。
差別問題の存在を指摘されたときに、
ある種の人によく見られる、動機の矮小化です。
「差別がある」と言われたのがとても不満だけれど、
その事実があることを直接否定できないので、
差別の存在を指摘した人をおとしめることで、
現状を肯定しようということでしょう。
東京大学の学生のジェンダー比を研究することは、
ここで述べたように意義のあることです。
だからこそ学会で発表できる内容だし、
また聴衆から反響があるということです。
あなたが考えているように「ひがんでいるだけ」なら、
研究対象するかたはいないでしょう。
かりに研究したとしても、その成果を話したところで、
聴衆から反響があることもないでしょう。