2018年05月20日

「童貞は恥ずべき」についての雑感(2)

5月2日エントリでお話した、童貞がなぜスティグマに
なったかについての記事を見ると、
澁谷知美氏が自分の研究のお話をしたとき、
聞いている男性の態度についてのエピソードが出ています。

「かつて“童貞”とは妻に捧げるものだった――童貞はいつから恥ずかしいものになったの?
社会学者・澁谷知美先生に聞いてみた」


澁谷知美氏が「いまは童貞の研究をしている」と言うと、
その男性は余裕の態度で軽口をたたくそうです。
ところが「いまは包茎の研究をしている」と言うと、
その男性は人が変わったように意気消沈するそうです。

 
http://originalnews.nico/84023/2

「澁谷さんはどういう研究をされてるんですか?」って
人から聞かれた時に、以前であれば童貞の研究をやっていたから
「童貞の研究です」って言っていたんです。

その時の男性の反応っていうのが、ビックリしたんですけれども、
ほぼ共通していて「いや僕も童貞です(笑)」と
すごいチャラい感じで言ってくるんですよ。
それは裏の意味では、「いや、僕は童貞じゃないんですけど」と
いうことなんですよね。
自分はもう童貞を卒業したもんだから、そういう軽口を叩けるんですよ。

でも今は「包茎の研究です」って答えるんですね。
そうするとみんな青くなって下を向いてしまうんですよ。
まあ、自己申告してるようなもんなんですけれども。
でも、ライトに包茎が語れるようになったと思われる
現在でさえ「まだ気に病んでるんだな」
「仮性包茎コンプレックスっていうのは、卒業が難しいんだな」って
いうことは、すごくよくわかりました。

その男性が「ぼくも童貞です」と軽い調子で言うのは、
自分はすでに童貞でなくなっていて、
スティグマがないからできる余裕ということです。

包茎のときの反応は「自己申告してるようなもんなんです」と
記事にあることが、雄弁に語っています。
自分が包茎というスティグマを抱えていて、
そのスティグマに触れるから意気消沈するということです。

記事ではこのような男性の態度は
「ほぼ共通していて」いると言っています。
こうした反応は多くの男性に見られるのだろうと思います。


澁谷知美氏が包茎を研究していると言っても、
包茎を中傷したり差別しようというのではないです。
なぜ包茎がスティグマになるかを、研究しているのでしょう。

差別問題を研究することの目的には、
差別が起きる原因をあきらかすることがあると思います。
それによって差別解消や被害者救済のために
どうしたらよいか、その手段や対策の
手がかりが与えられることになります。

研究によって包茎がスティグマとなる原因を
はっきりさせれば、そのスティグマを解消する方法が
見いだせる可能性が出てきます。
くだんの男性が包茎にスティグマを感じているなら、
包茎の研究は歓迎や応援をすることだと思います。

そこでなぜ意気消沈するのかと思います。
自分のスティグマに関することに触れているだけで、
その研究内容やスタンスにかかわりなく、
「自分にとってのタブー」なのかもしれないです。


実は童貞ではないのに「ぼくは童貞なんです」なんて
軽い調子で言うのは、本当に童貞でそれにスティグマを
感じている人に対して無神経だろうと思います。
このような男性は自分が強者や多数派の立場のときは、
被差別マイノリティに対して無理解で無神経な
言動を取れるということだと思います。

包茎の研究をしている研究者の前で意気消沈するのは、
自分が被差別マイノリティの立場にいるときは、
それで差別されたり不利益を受けると、
きゅうに被害者意識をあらわにするということだと思います。

自分のスティグマに触れられると傷つくというなら、
他人が被差別マイノリティで自分は強者の立場のときも、
彼らの立場や受けている被害に対して
無理解で無神経な態度を取らないで、
もっと理解と配慮をする必要があると思います。


わたしがよくわからないのは、
包茎がスティグマだというのに、包茎の研究をしている
研究者の前で「青くなって下を向いてしまう」なんて、
告白しているも同然の態度を示すことです。

スティグマは通常、それを極力隠そうとします。
自分の抱えているスティグマを知られると、
差別を受ける可能性が高くなるからです。
そんなに包茎に触れられるのが嫌なら、
わかりやすいまでに意気消沈するのではなく、
平然を装って態度で悟られないようにするところです。

告白同然の意気消沈した態度を示すことで、
「差別される自分」を理解してもらおう、ということでしょうか?
相手が差別問題に理解のあるかたならともかく、
一般の場合はそうはいかないと思います。
前述のようにスティグマを知られることで、
かえって自分を差別に晒すことになるでしょう。

隠す余裕もないくらい深く傷ついた、ということでしょうか?
それなら女性やほかの被差別マイノリティは
もっと日常的に、多数派や社会的強者からの
無理解で無神経な言動を、たくさん受けています。
目の前の研究者が、包茎の研究をしていると
言ったくらいで、なにをかいわんやだと思います。


posted by たんぽぽ at 19:38| Comment(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント