2017年05月20日

強姦加害者の被害者との関係

強姦加害者を被害者との関係ごとに
内訳を示した図があるので、見てみたいと思います。
出典は警視庁の『犯罪統計書』(2014年)、
内閣府『男女間における暴力に関する調査』(2014年)です。

警察の統計と、被害女性の申告について並べて示しています。
被害女性の申告と、警察で事件として扱ったケースとで、
あきらかに加害者の割合構成が異なっています。

 


被害女性の申告では、加害者の28.2%が「家族・親戚」です。
「知人」は3分の1程度、「職場関係者」は12%程度です。
「見知った人」の合計で4分の3程度になります。
「面識なし」は11.1%、1割強にとどまっています。

強姦の加害者は知っている人であるケースが多い、
見ず知らずの人に襲われるというイメージは正しくないと
よく指摘されますが、それを裏書きしていることになります。

「レイプにまつわる「迷信」」

迷信4『レイプは赤の他人によって行われる』

報告されたレイプの約半数において、
被害者は加害者と顔見知り以上の関係にあります。 
被害者の1~2割は親しい友人や家族の一員にレイプされたと報告しています。 

さらに、身近な人にレイプされた人は、
知らない人にレイプされた人に比べ報告しない傾向が強いので、
報告されない例も含めると知り合いによるレイプが
全レイプの大部分を占めるとも予測されます。


加害者が見知らぬ人の場合よりも、見知った人、
身近な人のほうが、被害を訴えにくい傾向があります。
それゆえ申告されなかったケースまで入れると、
「職場関係者」「知人」「家族・親戚」が加害者のケースは
もっと割合が高くなるかもしれないです。

被害者の何%が通報した? 通報をためらわせる理由


警察が事件として扱った強姦事件は、
「家族・親戚」が加害者のケースはわずか5.8%です。
家族や親戚による強姦の場合、申告された被害のかなりが、
警察では事件として扱われず、取り下げられている
ということになるでしょう。

これは日本では親族間や夫婦間の強姦が、
刑法によってはっきりと犯罪とされないことが、
原因のひとつとして考えられます。

「性犯罪の範囲の広さ」
「Convention on the Elimination of All Forms of Discrimination against Women」

33. The Committee is concerned that, under the Penal Code,
the crime of sexual violence is prosecuted only upon complaint
by the victim and is still considered to be a crime against morality.
The Committee further remains concerned that the penalty
for rape remains low and that incest
and marital rape are not defined explicitly as crimes under the Penal Code.

33. 女子差別撤廃委員会は、現在の刑法の規定では
被害者からの訴えがないと性暴力が告訴できないこと、
ならびに性暴力が道義的な犯罪とされていることを懸念する。
さらに女性差別撤廃委員会は、レイプに対する刑罰が軽いこと、
また、親族間や夫婦間のレイプが刑法において
依然として犯罪と明記されていないことを懸念する。


警察統計の「面識なし」は49.1%、約半分です。
申告された被害は、加害者が「面識なし」は1割強です。
加害者が面識がある人のケースの多くを
警察が取り上げないことで、「面識なし」の割合が
警察統計では大きくなっていることになります。

「強姦の加害者は見知らぬ人である」という誤解は、
こうした警察の扱いかたも関係しているのかもしれないです。
あるいは警察もこのような誤解があって、
被害者の見知った人が加害者である強姦を、
あまり取り上げないのかもしれないです。


「こまえーきの犯罪学講座 強姦・強制わいせつ編」を観ると、
被害者と面識がない加害者の割合は、
2012年の警察統計で約50%となっています。

「こまえーきの犯罪学講座」
「こまえーきの犯罪学講座 強姦・強制わいせつ編」

レイプ神話 - 4. 見知らぬ人の犯行である

この数値をもって、見知った人が加害者のケースは
約半分になるので、「強姦の加害者は見知らぬ人というのは、
よくある誤解である」としています。

実はこれでも、かなりの数の見知った人が加害者の
強姦が警察によって取り下げられた結果なわけです。
取り下げられたケースまで入れると
加害者が被害者と顔見知りのケースは、
もっとずっと多いということになります。


posted by たんぽぽ at 22:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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