大衆迎合主義を挙げるエントリがあります。
「トランプ狂騒曲」
ここで指摘したいのは、このエントリを書いたかたは、
大衆迎合主義に問題を感じていないらしいことです。
トランプ氏がなぜ勝ったのかというと、
現状を変えるという強いメッセージだろうな。
ラストベルトに代表される製造業の不振、
拡大し続ける貧富の差、後から後から入ってくる移民。
白人の中産階級に属する有権者は、現状を維持するだろうヒラリーよりも、
とにかく何かを変えてくれそうなトランプに票を投じた。
トランプは泡沫候補から共和党代表を勝ち取った。
後知恵で考えると、このときの勢いがトランプの原点だったのだろう。
その時点で一番大衆に響くセリフをガツンと言うのがトランプのスタンスだ。
「なにかを変えてくれそうな期待感」とか、
「大衆に響くセリフを言う」なんて、まさに大衆迎合主義です。
メインブログの1月1日エントリで触れましたが、
トランプが公約している政策はひたすら減税とか、
皆保険制度の廃止といった「小さな政府主義」です。
これらは日本では小泉純一郎や橋下徹がやってきたことです。
彼らが為政者を続けたことで、なにがどうなったは、
ずっと見てきてよくわかっていることだと思います。
いまだに大衆迎合主義や小さな政府主義を、
このように評価できる人がいるのかと、思いたくなるところです。
実はよくわかっていて、それでなお問題があるとは
思っていないということかもしれないです。
「なにかを変えてくれそう」という期待感だけで支持する
「カイカク」の精神構造について、前にお話したことがあります。
「カイカクを支持する人たち」
「期待感だけで選ぶ人たち」
彼らは政治をいわばゲーム感覚でやっているのでしょう。
それゆえ「なにか変えてくれそう」しか関心がなく、
実際にどう変わって、どう暮らしに影響が出るかは
念頭にないのではないかと思います。
そしてそれは自分の生活に苦労がほとんどなく、
自分の生活と無関係なところに政治があるので、
政治による自分の生活への影響が少ないからだと思います。
また自分の生活は苦しいにもかかわらず、
「政治で自分の生活を改善する」という意識がないので、
政治が生活と無関係になって、ゲーム感覚で政治を
考えるというタイプの人もたくさんいそうです。
政治が生活と関係ないので、政治的敗北によって
失なうものが、彼らにはほとんどないです。
それゆえ支持した政治勢力が期待通りでないと
簡単に「失望」して、支持政党をわたり歩くことができるわけです。
2015年5月に大阪都構想の住民投票がありましたが、
30代-50代の男性に賛成が多かったのでした。
これは「カイカク」がこの世代・ジェンダーの層に多い
ということを示していると言えます。
「大阪都構想・住民投票(2)」
30代-50代の男性というのは、まさに社会的強者であり、
自分の生活の苦労が、ほかの世代や女性と比べて
ずっと少ないので、もっともゲーム感覚で政治を
やっていられる層ということだろうと思います。
日本の場合、おおさか維新が関西の地域政党に収まって、
「小さな政府主義」と「大衆迎合主義」は
まがりなりにも収拾がついたかのように思っていました。
ところが2016年の東京都知事選で、
小池百合子が圧倒的な支持で当選です。
収拾なんてぜんぜんついていなくて、
まだまだ「カイカク」を求める人たちは相当数いると、
改めて認識させられることになったのでした。
最初のエントリの、トランプの大衆迎合主義に
問題を感じていないらしいかたは、
理工系出身、妻が専業主婦で、企業の研究職をしていると
思われるので、生活は安定しているでしょう。
世代は40代なかば、まさに「カイカク」世代のほぼ真ん中です。
典型的な「社会的強者」であり、安心して
「なにかを変えてくれそう」というゲーム感覚で、
政治をやっていられる立場ということです。
東京都知事選は小池百合子を支持していました。
付記:
「大衆迎合主義」は、大衆受けがよければ、
どんな政策を標榜してもよいと言えます。
実際にはわかりやすいメッセージを出しやすいので、
「小さな政府主義」を掲げることが多いです。
また多数派の劣情をあおりやすいので
「差別主義」にも走りやすいです。
「差別主義」も社会的強者はもっとも被害を受けにくいどころか、
劣情をあおられる側なので、支持しやすいと言えます。