2016年12月11日

LGBTの権利・自民党の動き

12月4日エントリと、12月10日エントリの続き。

性的少数者の理解増進の法案提出に、
自民党がまったく消極的という朝日新聞の記事に、
自民党内の動きがやや詳しく出ています。

「外圧もあるが…LGBT理解への法案、自民が腰重い理由」
「LGBT 自民足踏み 参院選公約に「理解増進」法整備 
党内・保守派から異論 再び失速」
(全文)

 
意外なのは、稲田朋美が性的少数者の権利に理解を示し、
理解増進の法案提出のために動き出したことです。

稲田朋美は選択的夫婦別姓については「亡国法案」などと言って、
典型的かつ強烈な反対をしていたのでした。
それとは打って変わって対極的な態度だと思います。

「同姓強制は受け入れられたか」
「夫婦別姓で家族崩壊? 稲田防衛相が語ってきたこと」


性的少数者の理解増進法案の推進に乗り出した背景には
サンフランシスコの慰安婦像設置問題があるようです。

自民党内で動いたのは、政調会長だった稲田朋美防衛相だ。
稲田氏は昨年9月に訪米。
旧日本軍の慰安婦像設置を進めるサンフランシスコを視察し、
「日本を一番応援してくれたのは、性的少数者の団体だった」と聞いた。
「性的少数者の中にも保守派はいる。
イデオロギー闘争と結びつけて考えてはいけない」

稲田朋美が視察したというのは、この件だと思います。
稲田朋美が「日本を応援した」と言うので、
否定派に与したということでしょうか?

「サンフランシスコ市議会 慰安婦碑設置支持の決議可決」


稲田氏は今年2月、党内に特命委員会を設置した。
反対派を抑えようと、安倍晋三首相に近い古屋圭司衆院議員を委員長に。
差別禁止法性自体に後ろ向きな党内に配慮し、
「差別禁止」ではなく「理解増進」法案を掲げた。

この委員会は「性的指向・性自認に関する特命委員会」
というもので、このブログでも前に紹介しています。
稲田朋美が主導して設置したものだったのですね。

「LGBTについての自民基本方針」

口先だけでなく活動していることは評価できるでしょう。
このように自民党内でも、マイノリティの権利に関して
推進派が一定の力を持つことはあるし、
稲田朋美のように、ほかではマイノリティの権利に
理解のない議員が推進することもあります。

それでも自民党内の反対派の力は強大で、
推進派の活動はおよばず、握りつぶされるのが相場です。
性的少数者の権利の法案もそうなると予想されます。

選択的夫婦別姓法案は、このような経過をたどりました。
12月4日エントリでも触れましたが、「後ろ向きな党内に配慮し、
「差別禁止」でなく「理解増進」法案」なんて、
反対派に妥協するところなんて、選択的夫婦別姓の提出が
難しいので「例外制法案」「家裁認可制法案」など、
後退法案を持ち出した過程に既視感があります。


性的少数者の「理解増進」法案の反対派として、
あの八木秀次氏が登場します。
八木秀次、山谷えり子なんて、「いつものメンバー」です。

3月下旬、山谷えり子参院議員の部屋に議員数人と、
首相に近く保守派の一部に影響力のある
八木秀次・麗沢大教授が集まった。
出席者によると「理解増進でも、性差を否定する
『ジェンダー・フリー』や同性婚につながりかねない」との
懸念を共有したという

アメリカ合衆国で同性結婚を禁止する「結婚防衛法」に
最高裁から違憲判決が出たときも、
八木秀次は同性結婚に反対する発言をしていました。

「子を産めないから反対?」
「「最終的に日本も」「家族制度が崩れる」 米最高裁の同性婚支持判決に国内は賛否」
高崎経済大の八木秀次教授は「婚姻は次世代を担う
子供を産み出すものとして法律で特別に保護されてきた。
家族制度の根幹が崩れるので、同性婚を法的に認めるべきではない」と話す


八木秀次氏は、戦後民法によって規定された
家族のありかたを金科玉条のように守る
「家族思想信仰」のこちこちの信者と言えます。
同性結婚も戦後民法の規定にはないので、
彼らの信仰から見たら「異教徒」ですから、
ただひたすら存在を否定し排斥するだけになります。

性的少数者の理解増進法案対策の会合にもやってきて、
八木秀次は「家族思想信仰」を楯にして、
頑迷きわまりなく反対したということです。
八木秀次は「家族教」の坊主か修道士だと言っていいでしょう。


理解増進法案の推進派は、八木秀次に理解を求めるべく
面会するのですが、なにを言っても無駄だと思います。
反対派は寸分の譲歩をすることもなく、
頭から反対する以外に了解できることはないからです。
彼らの「信仰」は決して譲ることはあってはならないのでしょう。

八木氏に理解を求めようと、古屋氏らは翌週、党本部で八木氏と面会。
「党の基本的な考え方」と法案の素案を示した。
八木氏は「異性愛を基本とする社会のあり方を変える」と反発。

推進派が反対派のところへ行って、理解を求める
というのは、選択的夫婦別姓のときもありました。
そして反対派はなにを言っても理解も譲歩もまったくしない
というのも、選択的夫婦別姓と同じ展開です。

新聞記事で、自民党内の推進派と反対派の事情を
並べて書くことからして、選択的夫婦別姓のときと既視感です。
また同じことを繰り返すのかという気がして、
わたしはいまから徒労感を覚えたりもしています。


posted by たんぽぽ at 15:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 民法改正一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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