法案提出に、自民党がまったく消極的という朝日新聞の記事に、
性的少数者問題に関する略年表があります。
「外圧もあるが…LGBT理解への法案、自民が腰重い理由」
「LGBT 自民足踏み 参院選公約に「理解増進」法整備
党内・保守派から異論 再び失速」(全文)
ここでは海外のところを見てみたいと思います。
国連、アメリカ、ヨーロッパ、アジアとひとつずつ取り上げられています。
>国際連合
2011年
国連人権理事会が、性的指向や性自認が理由の
差別と暴力を懸念する決議を初採択。日本も賛成。
これは2011年6月17日の決議です。
性的少数者に関する初の国連決議で、少し話題になったようです。
「国連人権理事会:性的指向に関する画期的決議を採択」
「性的指向と性同一性を理由とする差別との闘い」
国連人権理事会は、性的指向と性自認に基づく暴力や差別に対峙する
画期的な一歩を踏み出した、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。
国連人権理事会は、世界人権宣言でうたわれている基本原則を確認しつつ、
性的指向や性自認ゆえに世界中の人びとが受けている
差別や暴力に"重大な懸念"を示す決議を採択。
決議の提案国は南アフリカ共和国です。
南アフリカ共和国は、性的指向による差別の禁止を
憲法で明言している国で、性的少数者の問題に詳しいかたは
ご存知のことだと思います。
今回の決議は南アフリカが提案、世界全地域の42ヶ国により
共同提案にまわり、賛成23反対19棄権3で採択された。
「1996年に南アフリカは自らの憲法に‘性的指向'という
文言を入れることにより、世界に範を示した。
現在南アフリカは、LGBTの人びとの人権が擁護される
世界的な環境作りに寄与するべく、国連をリードしている」と
前出のレイドは指摘する。
国連人権理事会は2014年と2016年にも、
性的少数者に関する決議を可決しています。
さらに内容を強化・充実させているということです。
「●国連人権理事会等の決議など」
2014年9月:第27回人権理事会、性的指向と
ジェンダー・アイデンティティなどについて決議
http://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section3/2014/10/27-1.html
「国連:性的指向と性自認に関する歴史的な一歩」
国連人権理事会は2016年6月30日、
「性的指向と性自認を理由とする暴力と差別からの保護」に関する
決議を賛成多数で可決し、この問題を扱う独立専門家の任命を命じた。
>アメリカ合衆国
2015年
米連邦最高裁がすべての州で同性婚の権利を認める判断
6月26日、同性結婚を憲法が認める権利と判断しました。
この判決で事実上、すべての州で同性結婚が合法化となります。
「同性婚、全米で合法 最高裁「禁止の州法は違憲」
「「同性婚は合憲」アメリカ、全ての州で合法に ホワイトハウスもレインボーに染まる」
アメリカの連邦最高裁判所は6月26日、
同性婚を憲法上の権利として認めるとする判断を示した。
アメリカでは現在、13の州が同性婚を認めていないが、
この判決により全米で、同性婚が事実上、合法化されることになる。
アメリカ合衆国は2013年6月に、連邦最高裁判所から
同性結婚を禁止する「結婚防衛法」に違憲判決を下しています。
それに続く判決ということになります。
「同性結婚禁止が違憲」
>ヨーロッパ
2016年
イタリアで同性カップルに結婚に準じた権利を認める法律成立。
同性カップルの権利が法的に全く守られていないのは、
G7(主要7カ国)で日本だけに
2016年5月に、イタリアで同性結婚のパートナーシップを
認める法案が成立しました。
ヨーロッパでは最後の国となりました。
「イタリアで同性結婚法案成立」
「イタリアの同性結婚雑感」
イタリアは同性結婚の権利を認める法律がなにもないことで、
欧州人権裁判所から制裁を受けていました。
ヨーロッパは死刑と性的少数者に関しては、
人権意識のレベルが高いと思います。
>アジア
2016年
台湾立法院(国会)が同性婚合法化に向け、民法改正案の審議開始
これは11月17日に審議開始ですが、12月5日の時点でまだ審議中です。
ご他聞にもれず反対派の抵抗が猛烈で、成立するかどうかは微妙です。
「台湾、同性婚合法化の審議開始 反対派はデモ」
「台湾の同性婚合法化、土壇場で試練 アジア初法改正に反対論噴出」
台湾の立法院(国会)で17日、同性婚を合法化する
民法改正案の審議が本格的に始まった。
合法化が実現すればアジアで初めてとなる。
ただ同日は立法院周辺に反対する人々が1万人以上集まりデモを実施。
「伝統的な家庭の価値が崩れる」などと抗議した。
実現すればアジアで初の、同性結婚を法的に認めた国(地域)になります。
アジアで近い将来実現の可能性が高そうなのは、台湾、タイ、ベトナムです。
国際社会はちゃくちゃくと性的少数者の権利を認めるべく、
法整備を進めていることがわかります。
日本は性的少数者、同性結婚の法的整備でも、
国際社会から立ち遅れていくことになりそうです。
選択的夫婦別姓でさえ、法案が出てから20年経っても
実現の見通しがまったくないです。
最高裁判所でも同性強制に違憲判決が出ないし、
地裁では通称使用を認めない判決さえ出るくらいです。
自民党の様子を見ても、同性結婚の法的整備や、
性的少数者の権利なんて、まったくなにもしないまま、
国際社会の中で取り残されるのを意に介せず、
何年も過ぎていくのではないかという予感がしています。
「LGBT理解増進法案・自民で失速」