性的少数者の理解増進のための法案提出なんて、
自民党がまったく乗り気でないことを参院選の公約にした理由として、
朝日新聞の記事は、国内外の「圧力」を挙げています。
「外圧もあるが…LGBT理解への法案、自民が腰重い理由」
「LGBT 自民足踏み 参院選公約に「理解増進」法整備
党内・保守派から異論 再び失速」(全文)
(はてなブックマーク)
国外の「圧力」は前述のように、東京オリンピックです。
国内の「圧力」は次のようなことがあるとしています。
もう一つは、国内の動きだ。東京都渋谷区が15年2月、
同性パートナーに証明書を発行する方針を表明。
これを受け、自民党の馳浩・前文部科学相らが翌月、
LGBTに関する課題を考える超党派の議員連盟を立ち上げた。
さらに民主党(現・民進党)が同年12月に
「差別解消」法案の骨子案をまとめ、「外堀」は埋まっていった。
同性パートナーへの証明書は、東京の渋谷のほか
世田谷でも同様のものが発行されることになりました。
自治体レベルながら、国内初ということで話題になったのでした。
「同性カップルに結婚証明」
性的少数者に対する差別解消を目指す超党派の議連は、
翌月、3月17日に発足しています。
「性的少数者の議連が発足」
民主党が2015年12月にまとめた差別解消法案は、
以下の記事にくわしく出ています。
これは2016年5月27日に衆院に提出しています。
「性的少数者差別、民主が解消法案 通常国会に提出へ」
「性的少数者差別、民主が解消法案 通常国会に提出へ」(全文)
「民主党による「LGBT差別解消法案」について」
朝日の記事では「「外堀」は埋まっていった」と書いていますが、
わたしに言わせれば、ぜんぜん埋まっていないと思います。
自民党の性的少数者の権利に反対する人たちは、
この程度のことなど歯牙にもかけないでしょう。
現在法案提出の動きが失速しているのが、それを示していると思います。
これくらいの動きは、選択的夫婦別姓のときもありました。
自民党内の推進派が集まって議連を作り、
法案提出するよう、何度も働きかけていました。
民主党をはじめ野党各党も共同で、
毎年選択的夫婦別姓法案の提出をしていました。
その結果、いまもって選択的夫婦別姓が実現しない現状です。
自民党内でいくら推進派が活動しても、
頑迷極まりない反対派議員にあっさり潰されたのでした。
野党各党による法案提出も、自民党は毎回無視して
法案が審議されることはなかったのでした。
自治体(それも市区町村であって、都道府県でない)
レベルの動きなど、国政で無視するのはなんでもないでしょう。
超党派の議連は、そもそもが立法を目的とせず、
「理解を広めていく」ことを目指すという、腰の引けたものです。
腰が引けている理由が、問題の自民党内の頑迷極まりない反対派です。
http://megalodon.jp/2015-0317-2207-01/www.asahi.com/articles/ASH3K4JJ2H3KUTFK005.html
内閣や自民党内に伝統的な家族観を重んじる考えが根強いため、
議連では「差別解消法」などの制定を目的とせず、時間をかけて理解を広めていく
議連幹部は「法制化の議論を急ぐと反発を招く」と判断。
性的少数者への差別を人権問題として捉えるところから活動を始め、
徐々に理解を浸透させたい考えだ。
民進党の法案はまともな内容ですし、法案提出もしています。
それでも自民党が無視して審議をしないのは容易でしょう。
差別禁止法制自体に後ろ向きな党内に配慮し、なんて、民法改正から婚外子差別を切り離したり、
「差別禁止」でなく「理解増進」法案を掲げた
選択的夫婦別姓ではなく「例外制法案」や「家裁認可制法案」など、
後退法案を持ち出した過程を連想させます。
古屋氏は9月20日、特命委の役員会でというのも、法務部会で選択的夫婦別姓法案が握りつぶされ、
「党内の理解を広げる必要がある」とし、
臨時国会でも法案を出さない姿勢をしめした
いつも提出できずじまいになった状況を連想します。
このまま行けば、性的少数者の理解増進法案も、
選択的夫婦別姓法案と同じわだちを踏むことになりそうです。
自民党のお歴々が性的少数者の権利が認められないのと、
選択的夫婦別姓が認められないのは同根です。
彼らが戦後民法によって規定された家族のありかたを
金科玉条のように守る「家族思想」を「信仰」しているからです。
この「信仰」のもとでは、同性結婚も選択的夫婦別姓も
どちらも排除するべき「異教徒」です。
そして彼らは「信仰」を維持することしか眼中にないです。
よって同性結婚も選択的夫婦別姓のケースと同じく、
なにを言っても聞く耳もたず、頑迷極まりなく
反対するだけであることは容易に予想されます。
「圧力」として多少効果がありそうなのは、
メインブログでもお話した東京オリンピックです。
「法的拘束力はない」と言って、いくらでも無視できると
思っている国連各種委員会の勧告と違って、
国際オリンピック委員会の差別禁止条項は
実効性がある措置を受ける可能性があるからです。
オリンピックは選択的夫婦別姓のときにはなかった要素です。
これが今後の性的少数者の理解増進法案の推進に、
多少は影響をおよぼす(あまり期待しないほうが
いいでしょうが)可能性はありそうです。