男女の候補者数をできるかぎり均等にする
「政治分野における男女共同参画推進法案」を、
自民党のお歴々が猛烈に反発したことをお話しました。
「自民、政治男女均等法案に異論続出 「有能なら自力で」」
「候補の男女均等異論次々 女性議員増法案 自民内でつまづく」(全文)
(はてなブックマーク)
「お歴々」のひとりである西田昌司は、こんなことを言っています。
どこを見たらこんな認識になるのかというしろものです。
会議では、西田昌司参院議員が女性の社会進出が
少子化を加速させているとの考えを背景に、
「女性の社会進出で、社会全体が豊かになっているとは思えない。
もっと根本的な議論をしてほしい」と主張。
「女性の社会進出が少子化を加速させている」という認識が、
現状とまったく正反対なので嫌になってきます。
家族政策に力を入れ、女性が家庭と仕事を両立できる環境を
整備してきたフランスは、出生率が欧米の民主主義国の中では
もっとも高い国のひとつとなっています。
「フランスの家族政策」
「フランスの家族政策(2)」
「良妻賢母嗜好」が強い日本、イタリア、ドイツ、韓国
といった国ぐには、どこも出生率が低いです。
少子化を加速させるのは、「女性の社会進出」と対極にある、
因習・反動的な家族・ジェンダー観です。
「良妻賢母嗜好と出生率」
統計を見ても、人口オーナス期のOECD加盟国でも、
日本国内の都道府県別でも、女性の労働力が高いほど
出生率が高いという相関があります。
「出生率と女性の労働力率」
「日本の女性の就業率と出生率」
「女性の社会進出で、社会全体が豊かになっているとは
思えない」というのは、さらに輪をかけた暴論だと思います。
女性の労働力率の向上が経済成長をもたらす試算を、
西田昌司は聞いたことがないのかと思います。
2012年のOECDの報告書では、日本の場合、労働市場における
ジェンダー平等の実現で、GDPは20%近く増えると予測しています。
「OECDの男女格差の報告」
経済成長には男女平等が鍵となります。
労働市場における男女平等が実現すれば、
今後20年で日本のGDPは20%近く増加することが予測されます。
あるいは「社会が豊かにならない」というのは、
具体的には「失われた20年」を指すのでしょうか?
それは終身雇用、年功序列といった既婚男性の既得権を
維持させ、女性と若年層を低賃金の非正規雇用という
労働市場の周辺に追いやってきたことが原因です。
かかる賃金格差が労働生産性の低下を招き、未婚率を高めたり、
貧困率を高めたりなど、多くの貧しさの原因となっています。
「実質賃金の低下と男女格差」
「日本の非正規雇用はひどい」
「賃金格差と低い労働生産性」
長時間労働という労働文化の温存もあります。
物量にまかせた55年体制的な労働文化が維持され、
質や効率を重視した労働文化が根付かないので、
労働生産性が上がらず、国際競争性が低下することになります。
「人口ボーナス・オーナス」
「人口ボーナス・オーナス(2)」
長時間労働は、労働者が画一的であることが前提なので、
ダイバーシティという観点から女性を締め出すし、
また物理的にも家事を配偶者に任せられない女性を、
とくに管理職から締め出します。
よって「女性の社会進出」を拒んでいる人たちこそ
社会を貧しくしていることになるでしょう。
「WLBと女性管理職の割合」
「女性管理職と長時間労働」
こうした状況が続いて「失われた20年」となっているのは、
西田昌司のような因習・反動的な家族・ジェンダー観や労働観を
信奉する既得権益者こそ真の原因というか元凶です。
一般に社会が凋落していくのは、社会の変革が必要なときに
それを妨害する既得権益者の力が強いことが多いです。
女性は有史以来ほとんどどこの社会においても、
アウトサイダーや被差別マイノリティであって、
既得権益者になることがないので、社会の凋落の直接的な
原因となることはなかったと言えます。
西田昌司を批判するのは簡単ですが、
これは「反フェミ」にありがちな認識だと思います。
自民党にたくさんいるであろう因習・反動的な人たちも、
おそらくジェンダー問題や労働問題について
「反フェミ」同じような認識の人が多いのではないかと思います。
自民、政治男女均等法案に異論続出 「有能なら自力で」:朝日新聞デジタル"西田昌司参院議員が女性の社会進出が少子化を加速させているとの考えを背景に、「女性の社会進出で、社会全体が豊かになっているとは思えない。もっと根本的な議論を...」" この党にはこう思っている人が多いのでは。
2016/11/16 23:26