「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきだ」という考えに
反対の人が増えて、賛成の人が減ったことを見てきたのでした。
「男女共同参画社会に関する世論調査」
この設問に賛成と答えた人に理由も訊いているので、
これを見てみたいと思います。
「2.家庭生活等に関する意識について」
「ア 賛成とする理由」
もっとも多い理由は「妻が家庭を守った方が,
子供の成長などにとって良いと思うから」で
60.4%のかたが答えています。
これは「三歳児神話」や「母性神話」の影響や、
「母親が家にいないと子どもはさみしいだろう」という、
家庭のぬくもり幻想、標準家族幻想の影響と考えられます。
「三歳児神話」や「母性神話」には科学的根拠はないです。
多くの主要国において、親が共稼ぎよりも
専業主婦世帯のほうが、「親に愛されている」と
感じている子どもは少ないという調査があります。
「母性神話」
「行間を読む 9 <根強い「きずな」幻想>」
「3歳児神話を検証するII~育児の現場から~」
「共働き世帯の子の肯定感」
「日本の子の低い肯定感」
親から愛されていると思うか。共働き世帯の子のほうが,「愛されている」と感じてるじゃん。子と接する時間の問題ではないのだな。ただ,日本の肯定率が最低なのが気にかかるが。 pic.twitter.com/C0Akt3aUid
— 舞田敏彦 (@tmaita77) 2014年6月13日
このように科学的にも統計的にも根拠がないことが
依然として広く信じられているらしいことに、
この問題に関することの根の深さを感じます。
2番目に多いのは、「家事・育児・介護と両立しながら,
妻が働き続けることは大変だと思うから」で45.6%です。
この回答をしたのは女性のほうが多いです。
女性は直接的に家事、育児、介護の負担と直面するので、
思想や家族観ではなく現実問題として
とらえるかたが多い、ということだと思います。
性別に見ると,「家事・育児・介護と両立しながら,
妻が働き続けることは大変だと思うから」を
挙げた者の割合は女性で高くなっている。
3番目に多いのは、「夫が外で働いた方が,
多くの収入を得られると思うから」で32.9%です。
この回答をしたのは中都市で多くなっています。
共稼ぎのほうが収入が多く得られるはずなのですが、
中規模の都市なら、男性が高収入を得られる職が
それなりにあるということでしょうか?
都市規模別に見ると,「夫が外で働いた方が,
多くの収入を得られると思うから」を
挙げた者の割合は中都市で高くなっている。
4番目が「日本の伝統的な家族の在り方だと思うから」で、
20.8%もあるのは、注意を要するところだと思います。
「夫が外で働き妻が専業主婦」というのは、
日本では高度経済成長期に広まったものです。
「家族思想信仰の「経典」」
家庭のことは配偶者の妻に任せて、男性の労働者に会社に
専念できるようにしたほうが、生産性がよくなると信じた
企業利益のためにこのような家族観を普及させたのでした。
日本における歴史はわりあい短く、
とても「伝統的家族」とは言えないものです。
そもそも専業主婦世帯というのが、
19世紀のヨーロッパのブルジョワから始まったものです。
外国から輸入した家族観であって、日本固有のものではです。
このような「いつわりの伝統」「作られた伝統」を信じている人が
少なくない数いるのは、問題視する必要がありそうです。
少なくないのが、現状のようです。
女性が望まないことを男性が押し付ける
というケースが、ありがちだと思います。