2016年10月04日

ポルノと性暴力との関係(2)

性的メディアや性産業の利用によって、性暴力が減らせると
主張してやまないたまごどんですが、
次のエントリで、アメリカ合衆国ではポルノが増えたら、
レイプの認知件数が減った、という図を載せています。

「ポルノが性犯罪を増加させるという研究結果は無い」

今回はこれを見てみたいと思います。
結論だけ言うと、かなり怪しいです。

 
画像はアメリカのポルノコンテンツ数とレイプ認知件数のグラフです。

アメリカのポルノコンテンツ数とレイプ認知件数

たまごどんのブログが最後に載せているこの図を見ると、
1990年代のはじめからレイプの認知件数が減り始めています。
ポルノのコンテンツ数の推移を重ねて描いて、
レイプの減少は、ほぼ同じ時期に増え始めた
ポルノの功績だと言いたいということです。


実はアメリカ合衆国では、ほとんどすべての犯罪が
1990年代のはじめから減り始めています。
次の図に「暴力犯罪」と「財産犯罪」の年次推移が出ています。
レイプの認知件数と同様の傾向を示しています。

「米国の犯罪件数の推移」

米国の犯罪件数の推移

アメリカ合衆国では、犯罪全般が1990年代の
はじめから減り始めたのですが、レイプもそうした犯罪の
ひとつだった、ということだろうと思います。
ポルノが増え始めた時期と重なったのは、単なる偶然でしょう。
まさに「疑似相関」ということです。


なぜ1990年代に入って、アメリカ合衆国では
犯罪全般が減り始めたのか、上述の図録のサイトでは、
イギリスの経済誌『エコノミスト』の分析を紹介していて、
それによると10以上の説があるのですが、
どれも決め手がふじゅうぶんのようです。

冷戦崩壊以降、アメリカ合衆国で犯罪が少なくなりだした
本当の原因はわからない、ということのようです。


posted by たんぽぽ at 21:55| Comment(6) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ハードコアとなると、AV以外に写真集、漫画、ゲーム、小説なども含みそうですが、おっしゃるように、性犯罪との関連性については怪しいですね。

ポルノが性犯罪にどう影響しそうかをチャート式に書いてみると、以下のようになります。

男性のポルノ視聴

男性の生理的快楽欲・性的探究欲の満足、性的征服欲への刺激(昂進)

男性の性衝動が一時的に低下
(ただし、その後急速に回復し、時間経過につれて回復速度は緩やかになる)

男性が女性を性行為に誘う頻度に低下圧力
(性的パートナーにに対してはそれなりに低下、その他の女性に対してはあまり低下しない)

誘いに対する女性の拒絶割合への影響は不明
(誘う頻度が下がれば拒絶割合も落ちそうだが
受容しがたい行為内容の割合が増えると拒絶割合も上昇しそう)

女性が拒絶した場合に男性が性的強制する可能性に上昇圧力
(性暴力シーンの視聴が性暴力の肯定視につながる研究結果あり)
http://ci.nii.ac.jp/els/110002785519.pdf

女性が司法に提訴する可能性に低下圧力
(性暴力の肯定視が文化的に拡散すると、女性は後難を恐れて暗数化しやすい)

司法がそれを性暴力と認知する可能性に低下圧力
(性暴力の肯定視が文化的に拡散すると、
不同意であったのに同意によるものと判断される可能性増加、
司法の犯人摘発意欲の低下、
被害者側過失論により認知されない可能性が増えるかもしれない)

他に間接的影響もあるかも知れないが省略。
以上を見ていくと、男性のポルノ視聴が女性への性的強制を行う性暴力頻度を上昇させるかどうかは、私には分からない。

仮に性暴力が増えたとして、司法がそれを認知するまでにはさらなるプロセスがあるため、他の影響がないものと仮定して、性暴力の実態が増えたのに暗数化、司法の否認により、認知件数が減る可能性もありうるでしょう。

また、男性のポルノ視聴は女性へのセクハラ頻度への上昇圧力となるでしょう。

米国での犯罪認知件数低下の理由については、非常に多くの要因が考えられるため、どんな説が有力なのかは私にもわかりません。

一つの可能性として、文化的成熟による価値観多様化・文化構造多層化に伴う行動選択肢増大が特定の行為(犯罪)につながる可能性を低下させているのではないかと考えられます。

特に、インターネットの普及、携帯情報端末の普及はヒトの行動カタログを大幅に増やしました。

性暴力は基本的に性欲に攻撃性が結合したときに起こるが、
インターネット普及以前では性的強制となっていた行為が、現代では別の性犯罪行為、
例えばかつてはほぼ無かったリベンジ・ポルノ(スマホなどで撮影された性行為や
猥褻なコンテンツがインターネット上にばら撒かれる)に置き換わったり、
ネトゲでのPK(他の人が操作するゲーム内キャラクターを殺害する行為)などの犯罪ではない攻撃行動へと転化されたり、
Web上の新しいサービスなどで攻撃欲が昇華されたり癒されて解消されたりするなど、
行動のカタログ増加に反比例する形で特定の性犯罪の割合が低下する可能性が考えられます。
Posted by ritiarno at 2016年10月08日 20:30
性犯罪の罪別推移をみると、それぞれ傾向が異なります。

強姦 認知件数・検挙件数、検挙人員、検挙率の推移http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/62/nfm/images/full/h6-2-1-01.jpg
強制わいせつ 認知件数・検挙件数、検挙人員、検挙率の推移
http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/62/nfm/images/full/h6-2-1-02.jpg
強盗強姦 認知件数・検挙件数、検挙人員、検挙率の推移
http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/62/nfm/images/full/h6-2-1-05.jpg
強姦・強制わいせつ 検挙人員中の再犯者人員・再反射率の推移
http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/62/nfm/images/full/h6-2-6-01.jpg

強制わいせつ認知件数はAV流通量と正相関しそうですね。
Posted by ritiarno at 2016年10月08日 22:03
ritiarnoさま、
こちらにもコメントありがとうございます。

>ポルノが性犯罪にどう影響しそうかをチャート式に書いてみると、
>以下のようになります

>以上を見ていくと、男性のポルノ視聴が女性への性的強制を行う
>性暴力頻度を上昇させるかどうかは、私には分からない。

ていねいにありがとうございます。
アダルトメディアの利用が実際に性暴力を増やすかどうかは、
やはりなんとも言えないみたいですね。


>(性暴力シーンの視聴が性暴力の肯定視につながる研究結果あり)
>http://ci.nii.ac.jp/els/110002785519.pdf

リンク先は参照できなくなっていますね。
クリックしてもCiNiiのトップページが出てきます。

検索してみたけれど、こちらの論文ではないかと思います。
「暴力的ポルノグラフィー :
女性に対する暴力、レイ プ傾向、レイ プ神話、及び性的反応との関係」
http://ci.nii.ac.jp/naid/110002785519

もしそうでしたら、これはちょうどわたしも話題にしたことがあります。

「ポルノと性暴力との関係(4)」
http://taraxacum.seesaa.net/article/442450224.html


>米国での犯罪認知件数低下の理由については、
>非常に多くの要因が考えられるため、どんな説が有力なのかは私にもわかりません。

これはわたしにもわからないです。
専門家が知恵を出し合っても、はっきりしたことが言えないので、
「よくわからない」とするしかないように思います。

1990年代に入って、さかんに言われるようになった
カチカンの多様性は、関係がある可能性はあるかもしれないですね。

インターネットは増える犯罪も減る犯罪もありそうで、
こちらも微妙でなんとも言えないですね。
Posted by たんぽぽ at 2016年10月10日 07:41
>性犯罪の罪別推移をみると、それぞれ傾向が異なります

こちらもいろいろとご紹介ありがとうございます。


>強姦 認知件数・検挙件数、検挙人員、検挙率の推移
>http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/62/nfm/images/full/h6-2-1-01.jpg

これはわたしも取り上げたことがあります。
アダルトコンテンツの規制反対派が、
「ポルノで性犯罪が減らせるんですよ」ということを
「証明」する図をせっせと作ったりもしていました。

「ポルノと性暴力との関係(3)」
http://taraxacum.seesaa.net/article/438057948.html

1990年代の末から2010年くらいまで、認知件数が増えているのは、
警察が認知を積極的にする方針を取っていたからですね。
(検挙件数が増えないので、検挙率がくぼんでいる。)
この時期はほとんどすべての刑法犯罪の認知件数が増えています。


>強制わいせつ 認知件数・検挙件数、検挙人員、検挙率の推移
>http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/62/nfm/images/full/h6-2-1-02.jpg

こちらも2000年代に認知件数が飛び上がっていますね。
理由は強姦の場合と同様でしょう。
それがなければ、1990年ごろ(平成のはじめごろ)から
現在にいたるまで、ほぼ一定のペースで単調に
認知件数が増加したのだろうと思います。

>強制わいせつ認知件数はAV流通量と正相関しそうですね

そういう図を作って、アダルトビデオで性犯罪が減らせると
主張してやまない人たちに、見せてあげるといいかもしれないですね。
彼らは相関を根拠にするのが大好きですので。
Posted by たんぽぽ at 2016年10月10日 07:44
たんぽぽさん、丁寧なレスありがとうございます。

リンク先はご指摘の通りです。
お手数をおかけして申し訳ありません。

警察統計上、性犯罪を含む各種刑法犯罪の認知件数が軒並み増えているのは
おっしゃるように被害者の泣き寝入りを防ぐ意味合いで積極的に認知するようになったからですね。

社会統計で注意すべきはその影響要因の多さで、
どれも少しずつしか働いていないといった場合が多いので、一定の結論は出せないとするのが科学的に妥当というケースが多くなります。

仮にインターネットの普及で特定の犯罪が減ったとしても、めでたしめでたし・・・とはいかないですね。

インターネット上でもリベンジ・ポルノ、セクハラといった性犯罪が起こりますし、これらは暗数化しやすいので、仮に統計上の性犯罪が減ったとしても、実質的な性犯罪の脅威は減っていないかもしれないです。

>そういう図を作って、アダルトビデオで性犯罪が減らせると
>主張してやまない人たちに、見せてあげるといいかもしれないですね。

私の経験上、この手の人がそのくらいで主張を訂正するとは期待しがたいですが、
一般閲覧者が正しい判断を行うえるようにするためには有効ですね。
Posted by ritiarno at 2016年10月10日 19:42
ritiarnoさま、
またまたコメントありがとうございます。

>お手数をおかけして申し訳ありません

いえいえ。

>被害者の泣き寝入りを防ぐ意味合いで積極的に認知するようになったから

きっかけは1999年の桶川ストーカー事件ですね。
このとき警察が被害者の訴えに対して不熱心だったので、
猛批判を受けることになったのでした。
それで積極的に認知して犯罪の発生を
確認するという方針になったのでした。

「犯罪検挙率の動向」
http://kmktwo.blog95.fc2.com/blog-entry-219.html


>社会統計で注意すべきはその影響要因の多さで、
>どれも少しずつしか働いていないといった場合が多いので、
>一定の結論は出せないとするのが科学的に妥当というケースが多くなります

犯罪はその傾向が強いようですね。
犯罪件数について相関を調べる研究で、
これといった成果が出ない理由でもあるのですが。


>仮にインターネットの普及で特定の犯罪が減ったとしても、

>インターネット上でもリベンジ・ポルノ、セクハラといった性犯罪が起こりますし

あるところで減っても、別のところで増えることはありそうですね。
別のエントリのコメント欄でも出てきたけれど、
インターネットの性的コンテンツはどぎついですし、
全体的に犯罪のリスクも増えたと言えそうです。


>この手の人がそのくらいで主張を訂正するとは期待しがたいですが

主張を訂正する見込みは薄いと、わたしも思います。
それまでの議論で、相関にこだわっていたなら、
一時的にへこませることはできるかもしれないです。
Posted by たんぽぽ at 2016年10月12日 22:02
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