6月17日なので少し前ですが、性犯罪の厳罰化に向けて
刑法を改正する、法制審議会の答申案が出されました。
答申案が出ただけで、まだ国会への提出にはいたっていないです。
「強姦罪など告訴不要に 性犯罪、厳罰化へ 法制審答申案」
(はてなブックマーク)
「強姦罪など告訴不要に 法制審答申案 性犯罪厳罰化へ」(全文)
要点は
1. 強姦罪の非親告罪化
2. 「加害者は男で被害者は女」というスタンスをなくして
加害者、被害者ともに性別を問わない
3. 親による未成年者に対しての性的虐待を処罰対象
というものです。
3.は被害者が抵抗したかどうかに関係なく処罰できるようになります。
(親や監護者以外にが加害者のときは、その限りではない。)
18歳未満の子どもに対し、親などの生活を支える「監護者」が
「影響力に乗じて」わいせつ行為や性行をすることを罰する罪も親切される。
被害者が抵抗をしたかどうかに関係なく処罰でき、
親による性的虐待などが対象になる。
これらはこれまでずっと、日本の性犯罪に関する法整備に関する
問題点として批判され続けてきたことです。
ようやくこれらが改善されることになりそうです。
そして改善されてようやく欧米の民主主義国並みになることになります。
「こまえーきの犯罪講座 強姦・強制わいせつ編」
2009年の女性差別撤廃委員会(CEDAW)からは、
日本は性犯罪の法整備について、次のような勧告を受けています。
http://www2.ohchr.org/english/bodies/cedaw/docs/co/CEDAW.C.JPN.CO.6.pdf
33. The Committee is concerned that, under the Penal Code,
the crime of sexual violence is prosecuted only upon complaint
by the victim and is still considered to be a crime against morality.
The Committee further remains concerned that the penalty
for rape remains low and that incest
and marital rape are not defined explicitly as crimes under the Penal Code.
34. The Committee urges the State party to eliminate in its Penal Code
the requirement of the victim’s complaint in order to prosecute crimes
of sexual violence and to define sexual crimes as crimes involving
violations of women’s rights to bodily security and integrity,
to increase the penalty for rape and to include incest as a specific crime.
33. 女子差別撤廃委員会は、現在の刑法の規定では
被害者からの訴えがないと性暴力が告訴できないこと、
ならびに性暴力が道義的な犯罪とされていることを懸念する。
さらに女性差別撤廃委員会は、レイプに対する刑罰が軽いこと、
また、親族間や夫婦間のレイプが刑法において
依然として犯罪と明記されていないことを懸念する。
34. 女子差別撤廃委員会は、貴締結国に対して、
性犯罪の起訴の際、被害者の訴えをかならずしも
必要としないよう刑法を改めることを求める。
さらに性犯罪を、肉体的および精神的な、
女性の権利に対する侵害であると刑法で規定し、
またレイプの刑罰を重くすること、親族間のレイプをはっきりと
犯罪として刑法で規定することを求める。
朝日の記事は1.について、強姦を非親告罪化することよって
被害者の意思に反して立件されることのデメリットを
強調しているきらいがあると思います。
親告罪であることもメリットもあることはあるし、
非親告罪化すればすべて解決するというわけではないです。
法制審に先立って開かれた有識者会議で意見を述べた
性犯罪被害者の小林美佳さん(40)は「事件後、加害者や裁判とは
一切関わりたくないと思う人もいる。自分もそうだった。
本人が望まなければ、立件しない運用を強く求めたい」と話す。
部会では、検察官の委員が「被害者には処罰の必要性を十分説明する。
望んでいなければ、勝手に起訴しない」と説明した。
それでも処罰できない性犯罪被害者が増えるなど、
親告罪であることのデメリットのほうが大きく、
国際基準も非親告罪であり、国連委員会からも親告罪であることが
問題として勧告されているのですから、
強姦の非親告罪化は必要ということになるでしょう。
3.については、親や監護者が加害者でなくても、
被害者の抵抗に関係なく処罰できるようにするべきだ
という意見があります。
「現行でも暴行や脅迫の程度は幅広く解釈されている」として、
部会では議論の対象にならなかったのでした。
18歳未満の子どもに対し、親などの生活を支える「監護者」が
「影響力に乗じて」わいせつ行為や性交をすることを罰する罪も新設される。
被害者が抵抗をしたかどうかに関係なく処罰でき、
親による性的虐待などが対象になる。
被害者の間には、監護者以外による強姦や強制わいせつ罪についても、
「暴行や脅迫」という成立条件をなくし、抵抗の有無にかかわらず
処罰できるように改めるべきだ、という声もある。
しかし、有識者会議の時点で、「現行でも暴行や脅迫の程度は
幅広く解釈されている」として、部会では議論の対象にならなかった。
性犯罪においては、被害者の抵抗は往々にして過小評価されます。
2014年9月に、眠っている中学生を強姦したとされる男性が、
「中学生に抵抗を示した様子がない」として、
無罪判決が下されたことがあります。
「性的自己決定権は誰がために」
「現行でも暴行や脅迫の程度は幅広く解釈されている」なんて、
いったいどこがそうなのかと言いたくなります。
1万人を超す被害者から相談を受けてきた小林さんは
「被害者が拒まなかったとして、罪に問えない例に多く出会ってきた。
今回で性犯罪に対する議論を終わりにせず、今後も検討を続けてほしい」と話す。
付記:
性犯罪に関する現行刑法は100年前からずっと続いていたのですね。
家族に関する民法と同じくらい、むかしの法律を
時代の変化にかかわらず維持してきたことになります。
100年以上続いてきた規定を見直すことには、評価の声がある一方、