性犯罪が減った理由は売買春の非犯罪化というのは怪しい、
ということを検討した記事をご紹介しました。
「米ロードアイランド州における売春非犯罪化の効果に関して」
そこで犯罪の件数に急激な変化があるときは、
警察や司法の姿勢が変化した可能性を最初に考えるのが
もっとも妥当だということに触れています。
ロードアイランドの性犯罪については、住民でないわたしには
事情がわからないので、具体的になにがあったかわからないです。
司法機関の姿勢は?
そこで挙げられるのが、司法機関による性犯罪に対する姿勢です。
犯罪の急激な増減がみられるときには、まずこれを疑うのが鉄板です。
犯罪者の検挙人員は、その地域の警察がどれくらい積極的に
その犯人を逮捕しようとするかに左右されます。
また、性犯罪のような犯罪の被害者は、警察があまり熱心に犯人逮捕に
協力してくれないと考えれば、届け出るのを躊躇ってしまうでしょう。
そのような要因が、性犯罪者の増減として統計に表れている可能性があります。
ただしこればかりは、その国に詳しい人でないとわかりませんね。
一般的なケースとしては、犯罪件数の不自然な変動の原因として
警察や司法の姿勢の変化は、可能性がもっとも高いと思います。
犯罪が起きうる社会情勢は簡単には変化しないですが、
警察、検察や、裁判所、司法機関の姿勢は
変更すると決めた時点で反映されるからです。
警察や司法の姿勢が犯罪統計を「作る」ということに、
わたしが最初に触れたのは「凶悪な少年犯罪の増加」でした。
「第ニ章「強盗件数の増加をどう見るか」」
未成年者の強盗事件は1997年から件数が増えています。
これは1997年にたまたま起きた凶悪な少年犯罪の影響を受けて、
警察が取り締まりを強化したため、それまで強盗として
扱われなかった事件が、強盗と扱われるようになったためです。
公式な統計によると、第三の波以降は少年人口の減少もあってか、
少年犯罪の数は減少している。
ところが、1990年代後半の少年によるごく例外的な
特異な事件が発生したことにより、少年犯罪が増加した
という言説が広まり、大きな社会問題となった。
また、同時に現行の少年法は少年に対して甘すぎると言われ、
それを受けて警察は非行少年の補導や検挙活動を強める方針を打ち出したのである。
かつて、少年が金品を脅し取った後に被害者に暴行を加えた場合、
「窃盗及び傷害の容疑」として検挙されていた。
しかし、1997年6月3日に行なわれた全国警察少年担当会議で、
関口警察長官は「悪質な非行には厳正に対処、
補導を含む強い姿勢で挑む」という方針を打ち出した。
その方針に沿い、警察庁は8月に「少年非行総合対策推進要綱」を制定し、
悪質で重大な少年犯罪に対してはより重く取り扱いことを決定したのである。
このころは選択的夫婦別姓の反対派をはじめ、
「反フェミ」たちが、因習・反動的な家族観を維持するために、
女性の地位向上によって家庭が乱れ、子どもに悪影響だ
ということを「立証」しようとしていました。
「少年犯罪は本当に増えたか?」
凶悪な少年犯罪が増えたというのも、「反フェミ」がかかる
アジテーションのために利用した言説のひとつです。
それを調査する際、未成年者の強盗件数が増えたのは、
警察の方針のせいということを、わたしは調べたのでした。
2000年代の始めは、刑法犯罪の認知件数が増えています。
これは刑法犯罪が増えたからではないです。
同時期に検挙率が下がっているので、積極的に認知して
犯罪の発生を確認するよう、警察が方針を変えたことによります。
きっかけは1999年の桶川ストーカー事件で、被害者への対応が
ふじゅうぶんだったことで、警察は批判を受けたことによります。
「犯罪検挙率の動向」
認知件数とは警察が被害の届出を受理して犯罪の発生を確認した件数です。
そのため、警察の姿勢のあり方次第で簡単に変化する数字だといえます。
実際、警察の姿勢はある事件を契機に大きく転換しています。
それが99年10月におきた桶川ストーカー殺人事件です。
この事件では被害者の相談に対して十分な対応を行わなかった
警察の姿勢が批判の対象となりました。
この批判に応える形で、「相談業務の充実強化」
(『警察安全相談業務に係る関係機関、
団体との連携の推進について』(00年))を行うよう通達が出されたのです。
「警察に持ち込まれる相談事案については、(中略)、
その内容の如何にかかわらずすべて受理する」ようになったのです。
強姦の認知件数と検挙率の年次推移も、
刑法犯全体と同様の変動をしています。
やはり2000年代の始めに、警察が積極的に認知するよう
方針を変えたことによると考えられます。
「強姦、強盗強姦の認知件数・検挙人員の推移(1933年~)」
ポルノの規制反対派は、2000年代の強姦の認知件数の増加を
1996年に性表現規制が強化されたせいにしますが、
ぜんぜん関係ないということです。
「ポルノと性暴力との関係(2)」
関連エントリ:
「ロードアイランドの売買春研究」