自民党の憲法草案の「家族」を取り上げた、
朝日新聞の連載の「中」を見てきたのでした。
「(憲法を考える)自民改憲草案・家族:中 「助け合い」実態見ずに期待」
(はてなブックマーク)
「(憲法を考える)自民改憲草案・家族:中 「助け合い」実態見ずに期待」(1/2)
「(憲法を考える)自民改憲草案・家族:中 「助け合い」実態見ずに期待」(2/2)
この記事では世帯構造別の比率についての国勢調査に触れられています。
ここではこれを見てみたいと思います。
実態はどうだろう。2010年の国勢調査によると3世代の世帯
(4世帯以上も含む)は、一般世帯総数の7%。00は10%だった。
そもそも10年の国勢調査で最多だった家族の形は単独世帯、
つまり、ひとり暮らしだ。32.4%。彼らは誰と助け合えばいいのか。
3世代世帯は現在では少数派で、しかもどんどん減っていること、
そしてもっとも多いのはひとり暮らしの世帯ということです。
自民党のお歴々は、すでに少数派であり、
今後はさらに減ると考えられる家族のかたちを
「理想」として、数を増やそうとしていることになります。
世帯構造別の世帯数の推移は、以下の資料に図が出ています。
これは厚生労働省の資料で「国民基礎生活調査」にもとづくので、
記事中で参照されている国勢調査とは別物であり
数値も多少異なりますが、傾向はほとんど同じと言えます。
「国民基礎生活調査(平成25年)の結果から グラフでみる世帯の状況」
3世代世帯の割合は1975年は16.9%でしたが、
以後単調に減り続けて、2013年は6.6%まで減っています。
今後もまだ減り続けることが予想されます。
2010年の3世代世帯の割合は7.9%、2001年は10.6%であり、
記事で参照されている国勢調査の数値に近くなっています。
単独世帯の割合は1975年は18.2%、2013年は26.5%で、
こちらもほぼ単調に近い増加をしています。
2013年でいちばん多い世帯の携帯は夫婦と未婚の子のみの世帯の
29.7%なので、国勢調査の数値とは違っています。
それでも単独世帯は26.5%でかなり近くなっていて、
それほど遠くない将来に逆転する可能性は高いでしょう。
6.6%なんて夫婦別姓を希望する人の割合より少ないです。
夫婦別姓を希望する人たちは、今後も増える可能性があるのに
自民党のお歴々は「無視できるほどの少数」であるとして切り捨てます。
「東京新聞・別姓のアンケート」
「毎日・民法改正の世論調査」
「朝日・夫婦別姓の世論調査」
それより割合が低く今後も減り続けるであろう
3世代世帯は「あるべき家族」であるとして、
積極的に優遇政策を導入しようとさえするということです。
「3世代同居で少子化対策?」
「3世代同居・近居の支援」
大家族というのは、貧しい社会に多くなりがちです。
貧困ゆえに身を寄せ合わないと暮らせない人が多くなるからです。
かつての日本に大家族が多かったのは、
それだけ社会が貧しかったということです。
そして戦後、経済発展をしたから、核家族や単独世帯が増えたわけです。
「危機と貧困が作る大家族」
「曽野綾子氏の言い分について」
日本だって1950年代までは世帯構成員数は平均5人以上だったのである。
核家族になったのはつい最近のことであり、日本の伝統社会は大家族であった。
曽野氏のような保守派が回帰したいであろう、「かつての日本社会」である。
黒人社会を構成員数で特別視する根拠はどこにもない。
貧困に喘ぎ、小児死亡数が多い国では
人種とか文化と無関係に大家族になるのは当然だ。
危機下になれば、さらにその傾向は強くなる。
阪神大震災をぼくは直接経験していないが、
被災の経験を持つ人たちに話を聞くと、
「家を失って親戚の家に身を寄せた」という話はよく聞く。
いや、2011年の東日本大震災の何百人もが大挙し、
ダンボールだけで仕切られた避難所のことだって記憶に新しい。
曽野氏はもう忘れてしまったかもしれないが。
自民党のお歴々が「あるべき家族」として
回帰したいと考えているのは、かかる貧しい時代に特徴的な家族です。
そんなに貧しかったころがよかったのでしょうか?
戦後の経済発展(それは自民党長期政権が主導となって
もたらした)まで否定しかねないと思います。
上述のエントリは曽野綾子氏が人種隔離政策を評価したときに
書かれたものですが、「日本の伝統社会は大家族であった。
曽野氏のような保守派が回帰したいであろう、
「かつての日本社会」である」と書いているのが、
奇しくも皮肉だと思います。
関連エントリ:
「自民改憲草案・家族の助け合い」
「自民改憲草案・扶養義務」
単に保育と介護を丸投げしてるだけですね。
「なぜ」三世代世帯が減っているか、の原因に目をむけているのでしょうか。
12%の別姓希望者は「少数派」と黙殺し、
減るには減るなりの理由がある三世代世帯に目を向ける。
まさに「得手勝手」な政府ですね
>「なぜ」三世代世帯が減っているか、の原因に目をむけているのでしょうか
向けていないと思いますよ。
「睦み和らぎの心も豊かになっていくはず」なんて、
言っているくらいですし。
http://taraxacum.seesaa.net/article/437561399.html
3世代同居はトラブルが増えるなんてことも、
ぜんぜん意識していないだろうと思います。
http://taraxacum.seesaa.net/article/429277768.html
http://taraxacum.seesaa.net/article/429348147.html
>12%の別姓希望者は「少数派」と黙殺し、
「少数だから無視してよい」というのが、
反対のための口実というだけ、ということだと思います。
>まさに「得手勝手」な政府ですね
とんだダブルスタンダードだと思います。
「あるべき家族」が先にあって、それに都合のいいときだけ
多数決しているということなのでしょう。