メインブログの5月3日エントリと5月4日エントリでご紹介の、
自民党の憲法草案のうち家族に関する朝日の連載ですが、
「上」の最後には安倍晋三の「家族思想」に対する
「信仰告白」とも考えられる発言が引用されています。
「(憲法を考える)自民改憲草案・家族:上 個人より「家族」、消えた2文字」
(はてなブックマーク)
「(憲法を考える)自民改憲草案・家族:上 個人より「家族」、消えた2文字」(1/2)
「(憲法を考える)自民改憲草案・家族:上 個人より「家族」、消えた2文字」(2/2)
安倍晋三首相は自著「新しい国へ」で、こう書いている。
「『お父さんとお母さんと子どもがいて、
おじいちゃんもおばあちゃんも含めてみんな家族だ』という家族観と、
『そういう家族が仲良く暮らすのがいちばんの幸せだ』という価値観は、
守り続けていくべきだ」今年度予算では、
「3世代同居」住宅への支援が決まった。
「価値観は、守り続けていくべき」というのは、
国民全体がそういう家族観を「信奉するべき」であり、
また国民全体にかかる家族観を「信奉」させるのが
国家の役目であるということを続ける、ということでしょう。
ほかの人の家族観と無関係に、特定の個人で信奉する
自由を認めよ、という意味ではないだろうということです。
子どものいない家庭や、ひとり親家庭もたくさんあるし、
親世代と離れて暮らしたい夫婦もたくさんいるでしょう。
そうしたかたたちは、他人や社会から「幸せではない」とされるし
またみずからも「幸せではない」と思わなければならないわけです。
「なにが幸せかは国家や社会によって決められること」であり、
「なにが幸せかは自分で決めること」ではないということです。
ここに「家族思想信仰」にもとづく、国家や社会による
「家族のありかた」の統制があることになります。
「家族思想信仰」の中心的な家族のありかたは
おそらく高度経済成長期に定着した「標準家族」だと思います。
安倍晋三の理想はおじいちゃんとおばあちゃんが入った
3世代のようなので、そのぶん戦前の大家族に近くなっています。
この程度の過去への回帰は「家族思想信仰」からの
逸脱とはならないということのようです。
「少子化対策」として3世代同居住宅の支援にだけ熱心なのは、
彼らの「理想の家族」と一致するからだと考えられます。
それゆえ効果が薄く失敗する可能性があるという批判があるのに、
3世代同居の推進にこだわるのでしょう。
「3世代同居で少子化対策?」
「3世代同居の住宅政策」
「3世代同居の住宅政策(2)」
「3世代同居・近居の支援」
保育士の給与引き上げに、安倍政権が不熱心なことが
話題になっていますが、効果的なことが示されている家族政策は
彼らの家族観に反するので消極的になるということです。
昨年11月の「一億総活躍社会」関する政府会合では、
「3世代同居のような伝統的家族で出生率が回復する」という
自説を展開した出席者がいたのでした。
このかたの意見はさぞかし重宝したのではないかと思います。
「伝統的家族で出生率回復?」
15年11月18日に行われた「一億総活躍社会に関する意見交換会」の配布試料>加藤彰彦 明治大学政治経済学部教授 「希望出生率1.8」をいかにして実現するか(PDF) https://t.co/RGpyL86bVE
— C. K. (@suikyoCK) 2015年12月1日
付記1:
安倍晋三自身は子どもがいないので、自分で言っている
「いちばんの幸せ」に当てはまらないことになります。
自分で自分を否定しているとも言えることについては、
どう思っているのかと思います。
付記2:
安倍晋三は自民党が野党時代ですが、きわめてストレートな
選択的夫婦別姓反対の表明もしたことがあったのでした。
「夫婦別姓は家族解体が目標?」
関連エントリ:
「自民改憲草案・両性の合意」
「自民改憲草案・家族思想」