2016年04月29日

アサンジ擁護の記事のメモ(2)

4月28日エントリでご紹介した、アサンジ擁護の記事の続き。

「ウィキリークス・アサンジ氏の「強姦」容疑は「コンドームなしセックス」が口実」

この記事がすごいのは、問題のエントリはアサンジ事件について、
CIA陰謀説の可能性があると考えていることだと思います。

「Wikileaks創設者のアサンジ氏をレイプ告発した美女の正体はCIA関係者?」
という記事もある。真偽は不明(かつこの記事で
「スウェーデンではそういう法律がある」というのは誤り)だが
ハニートラップの可能性も疑われる。


これはまったくのデマです。
日本でCIA陰謀説を展開した高濱賛氏ご自身が、
情報源が「怪情報」だと言っているのだから世話ないです。
こんな陰謀説をデマとはっきり認識できない時点で、
「あっちにいっている」ものを若干感じましたよ。

「ジュリアン・アサンジ性犯罪容疑に関連したよくある疑問・異論への応答」
高濱賛氏が紹介している「CIAスパイ説」については、
わたしが以前の記事にも書いている通り、まったくのデマ。
女性Aはむかしキューバの反カストロ派の雑誌に記事を
寄稿したことがあるのだが、その雑誌の編集長はCIAと繋がりのある人物で、
CIAから資金援助を受けていたことがあとから分かった、
というのが『スパイ説」の大元だが、彼女自身がCIAと関わっているとか、
あるいはCIAが関与している雑誌と知っていて
寄稿したという証拠すら、まったくない。

「ウィキリークスのジュリアン・アサンジ逮捕をめぐる流言、
そして「強姦」と「『強姦』」のあいだ」

高濱は「怪情報」がソースであると断りつつ、
この女性は「左翼シンパということになっている」けれども、
実はCIAが資金を出している反カストロ派団体に所属していたことがあるから、
「アサンジをなんとかとっ捕まえようとした CIAが」
彼女を「使って『強姦容疑』で告発させ、
逮捕されるように仕組んだとしても不自然ではない」としている。

この「怪情報」というのは、以前ある左翼雑誌に掲載された記事が大元だが、
簡単にまとめると、CIAとの繋がりがある人が運営していた雑誌に
彼女が記事を寄稿したことがある、というだけの話。
彼女自身になんらかの繋がりがあるという情報は、
少なくともこれまでのところ一切でていない。


最初のアサンジ擁護の記事は、わたしのメインブログの
コメント欄で、紹介されたものでした。
スウェーデンの強姦の認知件数が多いのは、性暴力禁止法が厳しいからだ、
ということに反証するために示したものです。

「女性にとって性を売ること(2)」
アサンジ氏は当局によって嵌められたのではという記事から引用します。

>アサンジ氏の「強姦」疑惑は、スウェーデン当局によって
「性行為の後半にコンドームなしの状態があった」ことを
「同意なしの性行為を強要した」というふうにこじつけたものである、
ということがアサンジ側弁護士によって主張されている。

>一部では「スウェーデンではコンドームなしでセッ クスしたら
強姦とみなす法律がある」というように誤解されているようだが、
そんなことはない。
http://www.kotono8.com/2010/12/08assangerape.html

(2016年04月18日 21:28)

アサンジ擁護の記事に「一部では「スウェーデンでは
コンドームなしでセックスしたら強姦とみなす法律がある」
というように誤解されているようだが、そんなことはない」
という記述があるので、スウェーデンの性暴力禁止法は
他国と比べて取り立てて厳しいものではない
ということだと思ったのでしょう。


4月28日エントリでもお話したように、
「事故で避妊具が破れた」だけならスウェーデンでも犯罪にならないです。
「相手の意に反して避妊具をつけない」と犯罪になります。
アサンジ擁護の記事を書いたかたは、どういう意味で
「「スウェーデンではそういう法律がある」というのは誤り」
と思ったのかは、じゅうぶん判断できず微妙です。

わたしのブログでアサンジ擁護の記事を紹介した人は、
「相手の意に反して避妊具をつけないと犯罪になる
という法律もない」と解釈したであろうことはわかります。
それまでわたしのブログではスウェーデンでは
「相手の意に反して避妊具をつけないと犯罪になる」ことが
話題になっていたからです。


アサンジ事件の際にたくさん書かれたアサンジ擁護の記事は、
「スウェーデン法に特異な「不意打ちの性交渉」」と言ったりして、
「スウェーデンの法律だから強姦になるけれど
本当は強姦ではないんだ」と主張してきたのでした。

「スウェーデンだけ性犯罪に対して異様に法律が厳しい」と
主張してアサンジを擁護するということです。
そんな中にあって、「スウェーデンの法律は性犯罪に対して
とくに厳しいわけではない」という論拠のために
アサンジ擁護の記事を持ち出すのは、異例だと思います。

http://macska.org/article/332
テクノロジーやガジェットについて詳しい人気サイト・ギズモードの
本家英語版では、十二月三日に「ジュリアン・アサンジに
レイプの容疑はかかっていない」という記事を掲載した。
その記事では、アサンジにかけられた容疑はスウェーデン法に特異な
「不意打ちの性交渉」というものであり、
いわゆる「レイプ」とはまったく異なるものだ、
「被害者」とされる女性たちもレイプされたとは言っていない、
という趣旨のことが書かれている。


わたしのブログでアサンジ擁護の記事を紹介したかたは
今のところ、私の調査では上記の法律が見つかっていません。
こういう下ネタ的なトピックだったら日本語でも
見つかると思うんですけどね。おかしいなあ。

(2016年04月18日 21:28)
とも書いています。

アサンジ事件に関しては、誤解や曲解にもとづく
偏ったアサンジ擁護の記事がたくさん書かれたのでした。
となれば、スウェーデン検察や被害女性に不当に不利な
記事ばかりたくさん氾濫するのは当然と言えます。

http://macska.org/article/367
ウィキリークスの創設者ジュリアン・アサンジにかけられている
性犯罪容疑について、過去二回の記事(αシノドス初出
「ウィキリークスのジュリアン・アサンジ逮捕をめぐる流言、
そして「強姦」と「『強姦』」のあいだ」、
週刊SPA!初出「 スピン・コントロールとしてのアサンジ擁護論」)でも
紹介しているように、ジャーナリストの上杉隆・小西克哉・高濱賛各氏、
評論家の山形浩生氏ら、そうそうたる人たちが、
あろうことか容疑の深刻さを矮小化するような「誤報」を繰り返している。

英語圏でもマイケル・ムーアやナオミ・ウルフをはじめ、
リベラルあるいは進歩派とみられている著名な論者が
こうした言説を広めているのだが、それに対する批判や反論も活発に起きており、
ムーアやウルフはメディアで弁明や釈明を求められた。
また、ギズモードのような影響力のあるブログのいくつかは、
事実が分かったあときちんと訂正記事を出した。
それに対し日本語圏では、ほとんどそうした批判・反論が起きていないし、
誤報を出した人や媒体が訂正記事を出す例も見当たらない。

英語メディアでは当初から反論や訂正があったのですが、
日本語メディアでは反論や訂正もなく放置されたのでした。
日本語のメディアはなおさら、誤解や曲解にもとづく
アサンジ擁護の記事であふれていることと思います。


一般に差別主義的な言説のほうが氾濫しやすいです。
そうした発信をする人は、社会的強者であることが多く、
発言が抑圧されることが少ないからです。
被差別マイノリティの立場に立った記事や、
権利を主張する記事は少なくなりがちです。
そうした発信をする人は、発言が抑圧されやすいからです。

「下ネタ的なトピック」なら、男性の自己中心的な要求や
女性差別的な主張をする記事が氾濫しやすくなります。
アサンジにかけられた容疑の内容それ自体を矮小化するのが
アサンジ擁護の論調のメインですから、
容疑の内容を的確に把握した記事を書く人なんて
ほとんどいなくても無理もないことだと言えるでしょう。



posted by たんぽぽ at 16:42| Comment(2) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
↑性犯罪を矮小化させる割に、一方で”些細な”(とされる)性犯罪から
巨大陰謀説を唱える珍妙さを嗤ってみましたwww

そのアサンジ氏も支援しているという、”情報”を扱った似たような事件として、
エドワード・スノーデン氏の件は、ニュースも大きく取り上げたし、
内容もそれにふさわしい重大さだったので、私にもそこそこの認識があります。
彼のしたことは、虚偽を暴いたという意味において「正義」に近い行動だと、私は見ていますが、
海外メディアの取り上げ方も様々でしょうが(アメリカでも世論は割れているようだ)、
日本では告発した内容よりも、「職務に反した」方が注目され、
「一介の職員が犯したあまりにも重大な情報漏洩事件」
という、どちらかというと”悪い”扱いだった印象があります。

私の憶測ですが、もしスノーデン氏にアサンジ氏のような「女の影」があったら、
日本のメディアはもっとこの事件を好意的に扱ったと思います。

”スノーデンは、あの女にダマされて国を売った!”

みたいに。
アサンジ氏とスノーデン氏を比較すると、女の存在の有り無しで、
事件の評価がこれだけ変わってしまう。
(スノーデン氏には、例えばKGB※の陰謀説なんて無いですよね)
※ソ蓮崩壊時の1991年に解散してるけど。

日頃は「たかが女」と言ってるくせに、こういうことになると俄然、
「これだから女は怖い」と騒ぎ出す。
恐れているのかといえばそうではなく、結局は、
「世の中の不条理は、何でもみんな女のせい。男は何にも悪くない!」
にしたいだけだという…

ps.アサンジ氏の近況。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/kimuramasato/20160205-00054147/
と言っても今年2月時点の情報ですが。
まだエクアドル大使館にいるらしいですね。
Posted by あやめ at 2016年04月29日 22:37
こちらにコメントありがとうございます。

>↑性犯罪を矮小化させる割に、一方で”些細な”(とされる)性犯罪から
>巨大陰謀説を唱える珍妙さを嗤ってみましたwww

CIAや国家機関が陰謀を企てるなら、なぜに「コンドームが破けたの
生でやったのとかいうくだらない罪状」なんて
簡単に矮小化できる罪状をでっちあげるのか
ということは、以下のエントリでも指摘がありますね。
http://macska.org/article/367

これも指摘があるけれど、政府や国家機関が
実際に陰謀を企てることは、ほとんどないと思います。
陰謀なんてそう簡単にうまくいくものではないですならね。
政治利用することがあるのは、「たまたま起きた事件」だと思います。


>もしスノーデン氏にアサンジ氏のような「女の影」があったら、

女性が関係するかどうかで、まわりの反応が変わった可能性は
あるかもしれないと、わたしも思います。

>「これだから女は怖い」と騒ぎ出す。
>恐れているのかといえばそうではなく、

「怖い、怖い」というのは本当に怖いと思っていないからでしょうね。
そうではなく彼らの蔑視感の表れだと思います。
本当に怖かったら「怖い」なんて言えないでしょう。

アサンジ擁護に関しては、「たかが女とやったくらいで
権威あるメディアの主催者が犯罪者にされた」ことが、
受け入れられないこともあったのではないかと思います。

擁護した人たちは「容疑は深刻だがアサンジは無罪だ」という
論立てをせず、容疑の矮小化ばかりするのは、
「アサンジは有罪かもしれない」と内心では
思っているからかもしれないです。


>http://bylines.news.yahoo.co.jp/kimuramasato/20160205-00054147/
>と言っても今年2月時点の情報ですが。
>まだエクアドル大使館にいるらしいですね。

ご紹介ありがとうございます。
ずっと逃げ続けているのね。
Posted by たんぽぽ at 2016年04月30日 19:45
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