2016年04月17日

スウェーデンは強姦大国?(4)

3月13日3月14日3月19日エントリで、
「スウェーデンは強姦大国」と言われていることの
実態を示したエントリをご紹介しました。

「スウェーデンをディスるコピペに対する疑問。」

このエントリについて言及(反証?)している
エントリがあるので、これを見てみたいと思います。

「スウェーデンにおけるレイプ犯罪」


このエントリは「スウェーデンは強姦とされる範囲が広い」
ということの実態を、じゅうぶん理解していないと思います。
「範囲が広い」というのは、「夫婦間の強姦は認められるか」とか
「親告罪か」といったことだけでなく、以下のようなことも含まれます。

「ウィキリークスのアサンジ強姦事件」

スウェーデンの強姦罪はきわめて厳しく、性交渉をする際、
相手の合意に反して避妊具をつけなかったり、酒に酔ったり、眠っていて、
意識がもうろうとしている相手とセックスをしたら、「強姦罪」となる。
EU加盟国の強姦件数で、スウェーデンがトップである
というのも、ここに一因がある。

日本をはじめ多くの国で、「コンドームをつけてと言っても、
彼はつけてくれなかった」は日常茶飯事だ。
コンドームをつけなかったことで強姦罪で起訴されるなどとは、
予想だにできない男性が多いはずだ。

たとえば「相手の意に反して避妊具をつけなかった」という、
他国では「日常茶飯事」で強姦となかなかされないことが、
スウェーデンでは容易に強姦で起訴されることになります。
こうしたことが、他国に比べてスウェーデンにおける
強姦の認知件数が高い原因のひとつとなっています。


次の記事を見ると、スウェーデンと他国とのあいだの
性犯罪に関する法律のスタンスの違いがわかるだろうと思います。
日本を含めて多くの国では、女性の性を貞操観念で判断したり、
男性の所有物として扱う旧時代の意識が残っていて、
それが性犯罪の規定や運用に影響することが多いです。

スウェーデンでは他国よりもはっきりと、個人の性的尊厳や
性の自己決定権の尊重を「性暴力禁止法」の中心に据えています。
性暴力に関する法律の立法趣旨が異なるということです。
それゆえ他国では性犯罪にならなかったり、犯罪とされていても
軽く扱われることが、スウェーデンではれっきとした
性犯罪として扱われることになるのでしょう。

「ウィキリークスのジュリアン・アサンジ逮捕をめぐる流言、
そして「強姦」と「『強姦』」のあいだ」


(引用はやや部分的になっている。上記リンクで全文を確認されたい。)

多くの人が思い描く本物の「強姦」とは、主に見知らぬ他人や、
その他の絶対に性交渉を持ちたくないような人により、
無理やり体を抑えつけられ、暴力をふるわれ、あるいは暴力をふるうと脅され、
やるすべなく相手の意のままにされてしまう、そういうものだろう。

それに対して夫婦や恋人同士のあいだで起きるような行為は、
たとえそれが「寝ているうちに」でも「コンドーム使用を拒絶して無理やり」でも、
「強姦」とまで呼ぶのは大袈裟だ、と感じる人が多い。

日本をふくめ、世界の大多数の国の性暴力を取り締まる法律は、
こうした世間一般の感覚に忠実に作られている。
たとえば、日本の強姦罪や強制わいせつ罪は「暴力または脅迫」を
用いた場合のみに成立するように定義されているばかりか、
かりにそうした暴力があったとしても、夫婦ではお互いの関係が
決定的に破綻していない限り強姦罪は成立しないと解釈されている。

そうした定義に当てはまらないけれども、ある人の性的尊厳や
自己決定を侵害するような行為は、いわゆる「『強姦』」として、
法的にも社会的にも「強姦」よりかなり低く扱われがちだ。
フェミニスト法学者たちは、こうした各国の「強姦」観は
女性の貞操を家父長の所有物として扱う歴史的伝統から成り立っており、
それが夫婦間のレイプや性労働者に対する性暴力の軽視、
そして「強姦」に対する「『強姦』」の矮小化に繋がっている、と指摘している。

この前提において、取り締まられるべきなのは
ある男(父や夫)の持つ女性の身体と性への所有権が
「他の男」によって不当に侵害されること、
すなわち「よその男によって身内の女が寝取られること」のみだ。

もちろん、いまでは時代は変わっており、多くの国では女性の性や身体を
男性の所有物とみなすような法制度はおおかた是正されてきている。

けれども、「性暴力をふるうのは見知らぬよその男、
そして被害者は純真な女に限る」「暴力または脅迫のある
性暴力が一番深刻」という前提と、「強姦」と「『強姦』」のあいだの
法的・社会的な扱いの格差は、いまだになくなっていない。
こうした問題を解消するためにフェミニスト法学者たちが主張するのは、
「強姦罪」をはじめとする既存の性暴力関連法規を廃止するなり
大幅改正するなりして、個人の性的尊厳と自己決定権の尊重を
「性暴力禁止法」の中心に据えることだ。

すなわち、同意を得ずに性行為を押し付けること――
ここには、一方がコンドーム使用を求めているのに
もう一方がそれを拒絶するなども含む――自体が暴力として
認識されるべきだ、とかれらは主張する。

さまざまに歪曲され、まるで、たいしたことではない
「『強姦』」の代名詞であるかのように言われている
スウェーデンの「不意打ちの性交渉」とは要するに、そういう法律だ。
個人の性的尊厳と自己決定権の尊重を保護しようとしているという点で、
スウェーデンの性暴力関連法には他国より優れた側面があると考えている。


「アサンジ事件」でアサンジを擁護した人たちは、
アサンジにかけられた容疑の内容そのものを
矮小化する論立てをすることが多かったのでした。
「アサンジの容疑は深刻だが、事実無根であり実際は無実だ」
という主張を展開したのではなかったのでした。

これは擁護した人たちの「常識」や「感覚」に照らし合わせて、
アサンジにかけられた容疑はたいしたことではないと
見なされることを示しているということです。

アサンジの容疑を矮小化したい人たちは「スウェーデン法に
特異な「不意打ちの性交渉」」なんて言いかたをして、
「スウェーデンだから強姦になるんだ」と揶揄することもありました。
スウェーデンの「性暴力禁止法」が、彼らの「常識」から見て、
ずっときびしいことをはからずも示したと言えるでしょう。



問題のエントリ
ヨーロッパの約半分は婚姻を例外とせず、夫婦でも犯罪になることになっている。
この点に関して、スウェーデンが特に厳しい法律を
採用している訳ではないということが分かる。

犯罪者数カウントではなく件数カウントを採用しているのは珍しい訳ではない。
むしろ世界的に犯罪者数カウントをしている国は例外である。
このことはUNの報告書(PDF)で確認できる。
ちなみに、日本も件数カウントである。
といったことを書いて、スウェーデンの基準が
他国と比べて差がないかのように言っています。

上述の「アサンジ事件」のエントリを見れば、
法律の文面は同じようでも、被害者の性的尊厳や性的自己決定権に
関わる性質のものであれば、スウェーデンでは強姦になっても、
他国では性犯罪にならなかったり、強姦よりずっと軽い
性犯罪で処理されることが多いと考えられます。

また「スウェーデンの強姦罪」についての記事を見れば、
「夫婦間の性交で避妊具をつけてくれなかった」とか、
「寝ている配偶者と避妊具なしで性行為した」とかは、
他国では強姦とされないことが多いと思われますが、
スウェーデンでは強姦とされることが多いと考えられます。

スウェーデンでは性犯罪を個人の性的尊厳や
性的自己決定権に立脚させる。それゆえ強姦罪の適用基準が厳しく、
強姦とされる範囲が広くなり強姦の認知件数が多くなる」と
考えるのは、やはり間違いでないと言えるでしょう。


問題のエントリは「スウェーデンは強姦の範囲が広い」ことに
「反証した」と思っている人も多いようです。
エントリのコメント欄を見ても、「スウェーデンは本当は実質的に
性犯罪が多いのか」と信じこんだり、「我が意を得た」と思った
「反フェミ」の人が現れたりしています。

わたしのブログでも、問題のエントリをご覧になったかたが
こんなコメントをくださったりしています。

「女性にとって性を売ること(2)」

1.スウェーデンと日本の犯罪比較を論じたブログを貼っておきます。
その結論は、

>2004年次で比較すると、日本1.77に対して、スウェーデン23.78なので、
スウェーデンは日本の13.8倍のレ イプ認知件数があるということになる。

>(ただしこれは)犯罪の届け出があった認知件数の比較であり、
また、スウェーデンには夫婦間のレ イプも
カウントされていることを考慮に入れる必要がある。

というものでした。計算方法も問題なさそうです。
http://d.hatena.ne.jp/iDES/20060603/1149325567

日本との比較ですと配偶者の強姦が原因だと言われるでしょう。
でも、配偶者の強姦が罪になるヨーロッパ諸国と比較してみても、
スウェーデンのそれは高い。
もう認めましょうよ、スウェーデンの強姦認知件数は高いのです。

(2016年03月29日 23:07)


付記:

アサンジ事件については次のエントリが詳しいです。
ジュリアン・アサンジが有罪か無罪か、真相はいまだにわからないです。
どんな容疑をかけられているかはわかっています。
スウェーデン検察が公式サイトで発表していて、
2010年12月7日の『ガーディアン』で報道されています。

「ジュリアン・アサンジ性犯罪容疑に関連したよくある疑問・異論への応答」
アサンジが逮捕されたのち、スウェーデン検察が
公式サイト(英語版)において、アサンジの容疑は「rape」(レイプ)
「unlawful coercion」(不法な強要)および
二件の「sexual molestation」(性的暴行)だと明言している。
この四件の容疑の具体的な内容としては、
英紙ガーディアンの記事(12/07/2010)に詳しい。

記事の内容から四件の容疑を表にしてまとめてみる。

アサンジの4件の容疑

相手の意に反して避妊具をつけなかったことが「性的暴行」、
寝ている相手と避妊具なしで性行為が「レイプ」となっています。
法律で違法と定められないことで検察は容疑をかけないですから、
これらがスウェーデンでは性犯罪として
法律で定められていることがわかります。


posted by たんぽぽ at 17:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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