2016年04月14日

性産業従事のスティグマ

性産業に従事した経験に「スティグマ」はあるか?と言われたら、
「スティグマはある」と考えるのが通常だと思います。

2014年11月に、ホステス経験のある女子学生が、
日本テレビからアナウンサーの内定を取り消された事件がありました。
就職で不利に働くというのは、性産業従事の経験に対して
差別や偏見があることであり、性産業従事にスティグマがある
ということにほかならないでしょう。

「女子アナ内定取消で訴訟」


ほかに性産業従事のスティグマを示す例として、
性産業従事の経験があるというだけで、性被害を受けても
かまわないとか、しかたないという社会通念もあります。
日本では警察でさえ性被害を届け出たかたに性産業従事の経験が
あるかを聞くし、経験があると被害を軽く扱おうとします。

「アメリカ国務省に記載されている日本渡航時の注意」

性犯罪被害の事情聴取ではしばしば婦人警官の同席無しで行われ、
警察は決まって性犯罪被害者に性的な経歴や過去の関係を聴く。

「性を売り物にしている商売だから性差別を甘受せよ」
などという趣旨のことを言う人もいます。
これも性産業従事の経験がスティグマとなって、
差別的に扱われる事例と言えます。



性産業従事にスティグマがあるとなると、性産業従事の経験がある
という個人情報を第三者がむやみに口外することは、
(本人が了解したりすでに自分で公開しているのではないかぎり)、
厳につつしむ必要があることになります。

スティグマになる個人情報を公開されたことで、
なにか問題が起きた場合、責任を取るのは口外された本人です。
口外した人はそれに対して、なんら責任を負うことができないし、
口外された人を差別や偏見にさらすことになるので、
差別に加担することもなるからです。

「ランダムに(池田大作エスニシティ問題から)」
或るアイデンティティが或る社会において
スティグマとなる状況においては、本人のカミング・アウト以外に、
第三者がそのことを暴露することは慎むべきであろう。
というか、それはスティグマ化としての差別の継続に荷担することである。

中上健次は被差別部落民である、つかこうへいは「在日」であると
書くこと自体は問題がないだろう。
何れも本人がそう公言しているわけだから。

しかし、そうでない場合、その意図が善意であろうが
悪意であろうが、第三者が言ってはならないと思う。
アイデンティティが暴露された場合の帰結を
本人以外の誰も引き受けることはできないのだから。



「自分は性産業従事を『ふつうの職業』のひとつと考えて
『特別視』していないので、性産業従事に対する差別や偏見はない。
性産業従事の経験を『特別視』するほうこそ
差別や偏見がある」という趣旨の主張をするかたがいます。

一般にスティグマの話題、とくに情報公開が問題になると、
「スティグマの存在ゆえに特別視するほうこそ差別や偏見がある」
という意味のことを言う人は出てくると思います。

「風俗嬢について調べてみた」
最初にお断りしておけば、「お金のために腹をくくって
裸の世界に飛び込み、涙を流しながら性的サービスを提供している」
といったイメージはすでに過去のものである。
どこにでもいる一般女性がポジティブに働いている。
高学歴の者もいれば家族持ちもいる。これが現在の普通の光景である。(p13)

一般女性が普通の仕事として風俗を選択し、さして疑問を抱くことなく
ポジティブに働いている―これが現実だ。(P108-109)

「女性にとって性を売ること(3)」
それでもプロ野球選手を志す少年は全国にいて、努力を続けています。
要するに、職業については価値観の問題になります。
私は性産業従事だけを特別視する理由が分かりません。

(たまごどん at 2016年03月12日 23:20)
こうした話題になるということは、性産業従事女性のことを
結局は見下している気もしますね

(たまごどん at 2016年03月23日 01:26)


そこでわたしは上記のかたに以下のふたつのことをお尋ねしました。
性産業従事に「特別視する理由がない(スティグマがない)」なら、
これらの質問はどちらも「自信がある」と答えるはずです。

http://taraxacum.seesaa.net/article/434827919.html
あなたの娘さんが実際に性産業に従事したとして、
1. 「性産業に自分が従事していることを口外しないでくれ」と
娘さんに言われる可能性はない、という自信はあるか。
2. 娘が性産業に従事したことを友人知人に伝えて、
だれからも異様な眼や偏見の眼で見られない自信はあるか。

(2016年03月25日 22:58)

性産業従事にスティグマがあると考えるかたでしたら、
これらふたつには「自信がない」と答えるでしょう。
差別や偏見に配慮できるかたは、スティグマのある個人情報を
第三者がむやみに公開することは厳につつしむことだ
ということを理解しているからです。


ところが相手は2度もお茶を濁した回答をしたのでした。
1回目の回答(2016年03月26日 01:11)は、
わたしの質問の答えになっていないです。

1.性産業に勤めていることを言わないでくれと
彼女から言われれば、私は言いません。
2.異様な眼や偏見の眼で見る人が居ても、私は彼女を守ります。
私が娘にしてほしくないことは、犯罪とカルト宗教への入信です。
それに比べると、性産業での労働は些細なことです。

(たまごどん at 2016年03月26日 01:11)
娘が言うかもしれないし、言わないかもしれない。
正直、この質問がどういう意味を持つんでしょう。
口外しないでくれと娘に言わたら、何かの負けになるんでしょうか?
偏見の眼で見る人間はいるでしょうね。

これも1と同じく、どういう意図の質問なのかが掴めない。
そうした眼で見る友人知人とは縁を切れってこと?
私はそうするかもしれないし、そうしないかもしれないです。

(たまごどん at 2016年03月30日 02:07)

おそらく「自信はない」が本心なのでしょうけれど、
そう答えると「性産業従事を特別視する理由はない」という
いままで自分が繰り返してきた主張と矛盾するので、
はっきり言えなかったのではないかと、想像することになります。


posted by たんぽぽ at 22:47| Comment(6) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
性産業に勤める女性に差別意識を持つ方がいることは承知していますよ。私に差別意識が無いかというと、あるかもしれません。独身の頃は、この人なら結婚してもいいなと思う方も居ました。

お茶を濁すと捉えるのはたんぽぽさんの勝手ですが、どちらも私の本心です。勝手に本心を推測されるのは気分が悪いですね。
Posted by たまごどん at 2016年04月15日 00:29
>お茶を濁すと捉えるのはたんぽぽさんの勝手ですが、どちらも私の本心です

わたしが問題にしているのは、「あなたが本心を語ったか」ではなく、
「質問の趣旨に沿った回答をしたか」です。

あなたがいくら本心を語ろうと、こちらの質問に対して
趣旨に沿った回答をしてないから「お茶を濁した」と思われるし、
そうした理由を考えることにもなります。
Posted by たんぽぽ at 2016年04月16日 17:55
現代日本において、性産業で働く女性に対する差別意識(スティグマという耳慣れない用語よりも差別の方が分かりやすいと思います)を持つ方が多いことは常識です。しかしその常識は、あくまでも現代日本における常識にすぎません。

職業としての性産業従事を認めることと、その職業に対する差別意識を持つ方が存在することは矛盾しません。具体例はゴミ回収業者や葬儀屋です。
Posted by たまごどん at 2016年04月17日 10:14
コメントの主旨がよくわからないです。

ここで言いたいのは、「性産業従事を特別視するのは、
差別しているからではなく、差別に対する配慮から必要だから」
ということです。
Posted by たんぽぽ at 2016年04月17日 22:14
質問の趣旨にそぐわない返答だけど一言。

>しかしその常識は、あくまでも現代日本における常識にすぎません。
by たまごどん2016/04/17(Sun)10:14

では、過去にはそれが常識ではない時代があった、と?

『生まれては苦界 死んで浄閑寺の無縁仏』

と言われた世界だよ?
Posted by あやめ at 2016年04月28日 02:56
あやめさま、こちらにコメントありがとうございます。

「現代日本」だけでなく、他国にも同様の「常識」は
程度の差こそあれあるだろうと思います。

貞操概念とか女性の性を男性の所有物と考えることは、
近代国家のほとんどどこにでも見られたでしょうから。
Posted by たんぽぽ at 2016年04月28日 22:42
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