2016年03月09日

旧姓併記のパスポート

昨年の12月22日なので少し前になりますが、
選択的夫婦別姓を認めない現行民法を合憲とする最高裁判決を受けて、
元参議院議員の畑恵氏が、選択的夫婦別姓の記事を書いていました。
いまさらですがご紹介したいと思います。

「結婚したら名前が変わるなんてヤダー! ― 小1生の本音を最高裁はどう聞く」


「「旧姓併記パスポート」(メモ)」



畑恵氏が議員だったころ、選択的夫婦別姓反対派の女性議員から、
旧姓併記のパスポートを作ることを勧められたというお話があります。

たとえば、パスポート。最近は、旧姓併記のパスポート取得も
だいぶ緩和されてきたとはいえ、誰でも認められるものではなく、
海外での旧姓使用が必要と当局に判断された人でなければ発行はされません。

実は私も以前、ある人から勧められて旧姓併記パスポートを取得しました。
勧めてくれたのは、なんと夫婦別姓選択制に
断固反対している某女性国会議員でした。

同世代でほぼ同時期に結婚した彼女と、自民党本部のエレベーターで
偶然一緒に乗り合わせた際、「選挙は旧姓でも出られるようになったけど、
パスポートとか不便じゃないの?」と尋ねたところ、
「私、旧姓併記のパスポート取得してるの。
あなたも、参議院議員だったんだから大丈夫、認められるわよ。」
という答えが、あっさり返ってきました。

「おいおい、自分だけ認められればそれでいいんかい!」と突っ込む間もなく、
エレベーターは停止。彼女は開いたドアから颯爽と去って行きました。

パスポートの旧姓併記は2006年3月の旅券法改正で条件が緩和され、
多くの職種のかたに対しても認められるようになりました。

この場合、
1. 職場で通称を使っている
2. 業務上の渡航である
3. 通称使用が仕事に必要である
ということを書類で証明する必要があります。

外務省は原則として「必要のない人には認めない」という方針であり、
容易に認められるというものではないです。

「パスポートの旧姓併記」
「旧姓併記のパスポート」


このお話は2006年の旅券法改正の前の可能性があります。
(畑恵氏が結婚したのは1999年、議員在職は2001年まで。)
「あなたも、参議院議員だったんだから」という
反対派女性議員のセリフから察するに、畑恵氏はすでに議員をやめていた
2001年以降ではありそうです。

旅券法改正前はパスポートの旧姓併記が認められる職種は
研究者などかなり限られていたのでした。
国会議員は容易に認められた職種だったのかもしれないです。

「自民党の反対派議員が『通称使用でじゅうぶんだ』と言うのは、
自分たち国会議員はわりと容易に通称使用が認められるからで、
一般の人たちは通称使用を認められるのに
苦労していることが理解できないのではないか」と
考えるかたが、ときどきいらっしゃります。

この想像は、実は結構当たっているのではないかとも思います。
「おいおい、自分だけ認められればそれでいいんかい!」と
言いたくなったと、畑恵氏も書いているくらいです。
自分たちは通称利用が容易な「特権的立場」であることに
鈍感になっていることは考えられるでしょう。


このエントリ
「夫婦別姓選択制に断固反対している某女性国会議員」て誰?
という疑問が示されています。
自民党の別姓反対派の女性議員は、その多くが通称使用をしています。
なので該当者が多くて、絞り込むのは難しそうです。

「夫婦別姓と女性閣僚たち」

「同世代でほぼ同時期に結婚した彼女」という記述が
手がかりになりそうなので、興味のあるかたはこのあたりから
だれなのか探ることはできるかもしれないです。
(現職の議員ではないかもしれないですが。)


旧姓併記のパスポートを持っていても、本人という証明が難しく、
空港やホテルで予約が取り消されることもあるのですね。

パスポートに旧姓併記を認めることにしたのは、
実は本人であるという証明ができるようにして、
「予約取り消し」なんて事態にならないようにするためでした。
その肝心の「本人証明」に役に立たないということです。

しかも、旧姓併記パスポートが海外で招く混乱と言ったらありません。
とにかく同姓が義務なんて国は他にないわけですから、
二つの名前が並んだへんてこなパスポートを示すと、
どの窓口でも漏れなく「?」という顔をされ、そのまま留め置かれます。

空港の入国審査に始まり、航空券やホテルの予約などなど、
そのつど本人確認のために膨大な時間が費やされ、
運の悪い時にはリザベーションが取り消されてた!
なんていう悲劇も起きたりします。

これはひとえに選択的夫婦別姓が認められないのは
ほとんど日本だけということが原因にほかならないです。
日本だけの特殊事情など、諸外国では知らないかたが多くて当然です。
ふたつの名前が並んでいるパスポートを見ても
わけがわからなくても無理もないとも言えます。



posted by たんぽぽ at 22:49| Comment(2) | TrackBack(0) | 民法改正一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
国会議員は通称が認められるのに秘書は戸籍姓しか認められないそうです。
議員の一番近くにいる秘書が身分証明書と名刺の名字が違うので苦労してるのを目の当たりにしているのに。
それでも「通称使用すればいい」
神経を疑います。
Posted by わんわん at 2017年06月09日 16:06
わんわんさま、
こちらにコメントありがとうございます。

>国会議員は通称が認められるのに秘書は戸籍姓しか認められないそうです

国会議員は自分たちのことしか考えていない、
ということが、あからさまですね。
自分の利益に関することは敏感だけど、
関係なければ鈍感ということが、はっきり出ていると思います。


>それでも「通称使用すればいい」
>神経を疑います。

本気でじゅうぶんと思って通称使用でいいと
言っているのではない、ということになりそうです。
あたまで考えて言っているのではなく、
「マニュアル的対応」というか、なにかの「決まり文句」として
言っているのかもしれないです。
Posted by たんぽぽ at 2017年06月09日 21:48
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