2016年02月28日

性産業従事者は供給過剰か?

2月27日エントリの続き。
中村淳彦著の『日本の風俗嬢』を見ていくことにします。

中村淳彦は性産業の経営者が女性を「選別」するのは、
なんと「供給過剰だから」と考えています。

http://tamagodon.livedoor.biz/archives/51920158.html
供給過剰なので雇用する性風俗店と客による女性の選別が始まる。
容姿を中心とした外見スペックだけでなく、接客サービス業なので
技術、育ちや性格や知性などを含めたコミュニケーション能力が加味されて、
性風俗がセーフティネットではなくなり、
選ばれた女性が就く職業になってしまった。


経営者が女性を「選別」するのは「客の好みに合わないであろう
女を出すわけにはいかない、そんな女を出したら店の信頼に
かかわって客が来なくなる」というだけではないかと思います。

ようは「客」と「自分たち経営者」のための「女の質」の維持という、
「当たり前」のことをしているだけだと思います。
後述の「謝辞」で引用した中にあるように、
最近は店どうしの競合が激しくなっているというなら、
なおさら「女の選別」にはやかましくなっているかもしれないです。


性産業の経営者は、女性の外見に対してえげつないまでの
要求をすることはたくさんあります。
AV女優の場合ですがこんなこともあります。

「「大人の男性を敵に回すのはとても怖かった」 AV違約金訴訟・女性の手記」
向こうの要求が多く、例えば、痩せさせるまで強制的にジムへ行かされました。
ジムに行ったかどうか監視までつけられました。
なかなか痩せられなかった私は、メーカーやプロダクションの人から
屈辱的な発言を浴びせられ、泣いて帰ったこともありました

これはすでに雇っている女性に対してですから、
「供給過剰」ゆえの女性の「選別」ではないと思います。
「客受け」のために、女性に「スペック」を要求しているということです。


性産業は「供給過剰」どころか、あいかわらずなり手なんて
なかなかいないだろう思われることは、いくつかあります。
1. 女性にとって「性を売ること」はひどく不快で恐怖
2. 嘘の求人を出したり、女性に対して暴力的な店が珍しくない
3. 最近ではひとり親の母親を積極的に雇う
といったことが考えられると思います。

1.は普遍的なことと言えるし、2.もむかしから変わっていないと思います。
最近に特有な事情は3.だと思います。


1.についてはメインブログの2月4エントリでお話しています。
2.についてはもちろん、嘘をついたり暴力的手段を使わないと
女性を集められないからにほからないでしょう。
それくらい性産業はなり手がないということだと思います。

http://snn.getnews.jp/archives/245189
「風俗の求人は嘘が多いので信じないで」「社会保障が風俗に負ける」
という状況を苦々しく感じている人も多いようだ。

ただ、実際に番組が取材できた風俗店は
「上澄みのほんの一部」にすぎないという人もいる。
風俗店に勤務していたとする女性は、こんな書き込みを残している。

「風俗の求人広告は、女の子の気を引くように上手く作っていて、
嘘が多いので信じないでください。夜の世界は特に悪い人が多い」

元風俗店の店長だったという人の書き込みにも、
「託児所付きとは名ばかりで、紹介はするが、
契約などは一切関知せず、酷い話でした」というものがある。

https://www.bengo4.com/other/n_3912/
プロダクションが用意したマンションの部屋に引っ越しさせられて、
借金を背負わされることもあります。
とても高額なマンションなので、敷金・礼金が100万円くらいかかる。
それをプロダクションが前払いして、初回の出演契約をさせています。
つまり、債務奴隷です。

また、ある相談者は「あれはカルト宗教だった」と回想していました。
たしかにカルト宗教に近い問題があります。
それは、甘い言葉で勧誘し、まるで家族のように親しく接近し、居住の自由を奪う。
家族や社会から孤立させる。「相談役」もいる。
断ったり指示に従わなければ「違約金を支払え」と恐怖をあおる。
そうやって、女性たちに考えないようにさせ、抜け出せないようにさせています


3.については、「風俗嬢」という表現が示すように、
未婚の若い女性を従事させるのが本来ではないかと思います。
たぶんそのほうが「客受け」もいいのだろうと思います。

それをあえてひとり親の母親を雇おうとするのは、
そういうところにしかなり手がいないからであり、
とにかくなり手がいるところから求人しようということだと思います。

「あしたが見えない ~深刻化する“若年女性”の貧困~」

“ここにしか頼れない” 行き場のない女性たち風俗店の求人広告です。
寮あり、食事あり。託児所完備。シングルマザー歓迎。
今、貧困状態に置かれた女性のサポートを
うたい文句にする、風俗店が増えています。

ここ数年、生活の苦しい10代、20代の女性や、
シングルマザーが、特に目立ってきているといいます。
店では、子どもを預ける託児所と提携し、その費用を負担。
風俗店の中には、託児所を自前で運営しているところもあるといいます。

こうした性産業の求人は「寮あり、食事あり。託児所完備」という、
ほかの業種ではなかなか見られない好待遇となっています。
これもここまでやらないと従事する女性を確保できないこと、
それくらいなり手がないことを示していると言えます。


店の生き残りのために「女の質」を維持しなければならず、
それと同時になかなかいない従業員になる女性を
確保するために門戸を広げなければらないというのが、
性産業の現状ということかもしれないです。

こうした「現状」に対して「女ならだれでも性産業で
雇われるわけではなくなったし、これは供給過剰だからにちがいない」
というおかしなことを、中村淳彦は結論しているだけではないかと思います。



謝辞:

このエントリはメインブログの2月18日エントリでいただいた
あやめさまのコメントを参考にしています。
コメントをお寄せくださりありがとうございます。

「貧困のための性産業従事」

>現在は、風俗業界に「就職」することがかなり難しくなっており、
業界内での競争も激しくなっています。

これは、本当なのかなあ…?
リーマンショック以前と以降では、性産業に限らず、
どの分野でも値崩れしてるのは実感があるし、
だから単価を下げざるを得ない、多少心身を削ってでも仕事を取る、
っていうのも、どこでもやってるだろうとは思うのですが…

それならどうやったら「寮あり、食事あり。託児所完備。シングルマザー歓迎。」
という破格の待遇で女性を募集できるのか?
費用を給料から天引きするにしても、
性産業以外にまずお目にかかれない募集要項です。
(大企業の幹部クラス、国会議員、省庁、公務員でも
ここまでのサポートは無いでしょう。)

しかもこれは最近のことで、それこそバブル期~90年代あたりに、
ここまでのサポートは、業界内に一般的じゃなかったと思います。
それにあの頃なら店側がここまで気をつかわなくても、
女の子はいくらでも入ってきた。
良い子に来てもらうために、店同士でしのぎをけずるのも派手にやっていたし。
逆に言えば、今はここまでやらないと人が集まらなくなってるのでは?

昔より客足が落ちているのに、破格の待遇で女性を集め、
法の目をかいくぐり、違法スレスレの風俗店が乱立するのはなぜですか。
しかも、ここ10年くらいは風俗業界にもアジア勢が参入していますしね。
かなり厳しい競争が起きていると見るのが自然じゃないかと。
それでもやるということは、貧困女性のボランティア活動?
まさか。

「自らの意思でポジティブに働く」イメージは、
私にはむしろバブル期の方が強いです。

(2016年02月21日 03:34)


関連エントリ:

「女性にとって性を売ること」
「貧困のための性産業従事」
「女性の権利と性産業従事」


posted by たんぽぽ at 19:24| Comment(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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