2015年12月21日

夫婦別姓の偏見を相続に転嫁?

福島香織氏という、元産経新聞の記者が、
得体の知れない選択的夫婦別姓の反対論を展開しています。
(ときどき見かける名前ですが、非共存派だったのですね。)

福島香織氏の見解については、次のエントリで詳しく取り上げています。
以下のエントリで述べられていないことを中心に、
わたしも思ったことをお話したいと思います。

「元産経新聞記者の福島香織さんの
「姑は跡取り息子が死んだ後の妻の相続について夫婦別姓なら
納得いかないんじゃないか」といったTweetを読んで思ったこと」

(はてなブックマーク)


福島香織氏はどういうわけか遺産相続のお話をしています。
配偶者の法定相続分が、親よりずっと多いことがお気に召さないようです。


被相続人に子どものいない場合、親と配偶者は1:2という
法定相続分の規定は、息子夫婦の名字には関係ないことです。
選択的夫婦別姓が認められたところで、
夫婦別姓でも夫婦同姓でも法定相続分に変わりはないです。

法定相続分に関する規定が気に入らないのなら、
民法の相続に関する規定(900条)を変える主張をすることです。
なぜに相続と関係のない名字の規定である、
選択的夫婦別姓を反対する理由に持ち出すのかと思います。


福島香織氏は相続の交換条件として、改姓しろと言いたいようです。
法定相続分に対する不満を、名字に転嫁したということでしょうか。
名字が異なる嫁に遺産をわたすことを不愉快と思うのは自由ですが、
相続と名字のことはあくまでべつの規定であり、
名字を理由に法定相続人の権利が変化するわけではないです。

それとも、名字を理由に相続の権利が変化するよう
民法を改正するべきだと、福島香織氏は考えているのでしょうか?
その場合も、改正するのは相続の規定であり、名字の規定ではないですから、
選択的夫婦別姓に反対するのは筋違いです。

配偶者に死に別れたあと、改姓して配偶者の名字を
名乗っていた場合は、元の名字に戻す「復氏」ができます。
復氏によって旧姓に戻った嫁を、福島香織氏は許せるのかと思います。
現行法では、復氏しても姻族としての権利や義務はそのままで、
法定相続人の権利も失なうわけではないです。


福島香織氏が挙げているケースは、現実にどれくらいの頻度で
あり得るのかという疑問もあります。
30歳の男性が新婚3か月で、きゅうに亡くなるというのですよ。
サスペンスドラマみたいに、意図的に殺害されたのでないかぎり、
現実にはほとんどありえないことだと思います。

(ついでながら、「30年息子を育てた」というのは、
この息子はどれだけマザコンなのかと思います。
あるいはこの母親はよくよく子離れができないのでしょうか。)

また最初のエントリでも触れていることですが、
嫁が改姓したことで息子の財産をわたせるようになる親は、
どれだけいるのかという疑問があります。
福島香織氏が想定する親は、相当に息子の財産への
執着が強いようですから、そんな親は名字が同姓でも別姓でも、
同じように嫁に息子の財産をわたすのは嫌がるでしょう。


福島香織氏は、現実にほとんどない極端な事例を持ち出して、
相続という名字と法的にはなんの関係もないものを理由に、
選択的夫婦別姓に反対しているということです。
「こじつけ」もはなはだしいと言えます。

福島香織氏は「名字がいっしょでなければ家族でない」という
強い偏見があるので、別姓夫婦を差別的に扱うための「手段」として、
「遺産相続」という数値で表される「わかりやすいもの」を
持ち出したということだと思います。

「嫁が改姓すれば、親は息子の財産をわたせる気になる」なんて、
とうていありそうにないことを、本気で考えられるのも、
名字に対する強い偏見の反映ということなのでしょう。


最初のエントリでは
これを読んで、夫婦別姓反対派の人がこういう考え方だとしたら、
夫婦別姓賛成派とでは確かにギャップは大きいと得心するところがありました。
と書いています。
福島香織氏と同レベルの「こじつけ」で
選択的夫婦別姓に反対する人は、残念ながら珍しくないです。


posted by たんぽぽ at 22:46| Comment(0) | 民法改正一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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