ご紹介した、グレンデールの慰安婦像訴訟ですが、
大敗訴となった原告のGAHTは、控訴審で裁判を有利に
展開するために日本政府の支援を求めています。
「米慰安婦像撤去訴訟「なぜ日本政府から同調する意見表明ないのか?」
審理で判事が疑問発言、結局は在米日本人側敗訴」
原告は上級審に提訴する方針。原告側弁護人は上級審でも
日本政府から何らかの意見表明がなければ、
同じ判断が出る可能性が高いとの見通しを示している。
原告の一人で米国在住の目良浩一氏は、
「裁判で勝利するためには政府の大胆な動きが必須だ」として、
河野談話の破棄と訴訟の積極支援を求めている。
日本政府の支援にこだわるのは、裁判の過程で裁判官から、
日本政府からの同調がないことを指摘されていたからです。
判事が原告側弁護人に対し、像などの設置が日本人の感情を傷つけたとの
原告側の主張が事実であれば、「なぜ日本政府から同調する内容の
意見陳述書の提出がないのか」と発言していたことが分かった。
これは原告の4つの主張のうち、3と4に関するものですね。
「グレンデール市の慰安婦像裁判は、なぜ原告のボロ負けに終わったのか」
第三と第四は、それぞれ州法と州憲法の違反を訴えるもので、
像の設置によって日本人や日系人の平等権が侵害されたというものだ。
第三と第四は根拠とする法が憲法と州法に分かれているものの、
同じ議論であるのでまとめる。これらの訴因において原告は、
像が設置されたことにより日本人である原告たち自身が
像のある公園に行きづらくなったとし、平等に公園やそこに隣接する
図書館やレクリエーションセンターを使用する権利が侵害された、と主張した。
裁判所の判断は次のようになっています。
a. 碑文は旧日本軍の行為について書いている。
日本人や日系人に否定的なことは書いていない。
b. 原告は元日本軍の軍人ではない。
c. 碑文は日本人女性の被害者のことも書いている。
他国の被害者と比べてとくに差別的に扱っていない。
d. 3人の原告が公園に行きたくなくなったことで、
どんな被害が具体的に生じているか示されない。
e. ほかの日本人や日系人が同じように思っているかが示されない。
しかし裁判所は、原告のこうした主張は認められないとして、
いくつかの理由を挙げた。まず最初に、そもそもこの像やプレートは
旧日本軍の行為について書かれているのであって、
日本人や日系人に否定的なことが書かれているわけではない。
原告らは元日本軍軍人というわけでもない。
また、プレートには日本人の女性も被害にあったことが明記されており、
他国の被害者と平等に扱われている。
さらに、原告は像やプレートの存在が日本人や日系人に
不利益な結果をもたらしていることを示していない。
三人の原告が公園に行きたくなくなった、というだけであり、
ほかの日本人や日系人たちが同じように感じているとも、
公園に行きたくなくなったことでどのような具体的な被害が
生じているのかも示していない――立証できていないというのでなく、
そもそも主張していない――のだ。
日本政府が支援なり意見書を出すなりしたら、
e.はクリアできる可能性はありそうです。
日本政府が意思表明したことで、「同じように思っている
ほかの日本人」がいることは示されるからです。
それでも地元の日本人や日系人が同じように思っていることは
示されないわけで、e.さえも認められない可能性もあるでしょう。
またa.からd.までの4つは、日本政府が意見を
表明したところで、クリアはできないと思います。
かくしてまた恫喝訴訟認定を受ける可能性はあります。
あるいは恫喝訴訟認定を受けずにすんだとしても、
裁判の本戦で勝てる見込みはごく薄いだろうと思います。
論点の3と4のe.だけがなんとか恫喝訴訟認定を免れるレベルですし、
「恫喝訴訟認定を免れた=その主張が認められた」ではないです。
さらに3と4のe.以外の論点で、原告の主張が認められる可能性は、
相変わらずほとんどまったくない状況です。
これで日本政府が支援すれば自分たちは勝訴するとか、
そこまでいかなくても事態はだいぶ打開されると、
原告のGAHTは本当に思っているのかと思います。
論点3と4のe.だけが重要争点であるかのように
思っているらしいのも、よくわからないことです。
本気で日本政府の支援が「切り札」だと思っているなら、
視野が狭くなって、状況が見えなくなっているのでしょう。
こんな無茶苦茶な裁判を起こすくらいですから、
すでにじゅうぶんなくらい視野狭あい化しているとは言えます。
あるいは日本政府を巻き込むことで、日本国内のショービニズムや
ナショナリズムを煽ろうとでも、考えているのかもしれないです。
日本国内で世論喚起すれば、裁判が自分たちに
有利になるのではないかと、考えているのでしょう。
関連エントリ:
「グレンデール慰安婦像訴訟」