とある左派の経済政策観?と思われるものをご紹介しました。
「これでは左派が支持しないのは不思議でもなんでもないのでは?」
(はてなブックマーク)
このエントリについて、もう少し詳しく見てみることにします。
ここではつぎの箇所を見てみたいと思います。
「自民党だけではなく、共産党も社民党も、
政治家はお金がなければ公約は実行できない。
民主党政権がうまくいかなかったのは、
高校無償化や子ども手当を掲げたが財源が足りず、公約違反だと批判された。
ところが、金融緩和でお金を作っていれば全部でき、
おまけに景気も良くなったはずだ。
民主党政権には、そういう発想はなかった」
これ、そうでしたっけ? 保守派は民主政権が公約通りに
高校無償化をやろうとしたのを非難したんじゃありませんでしたっけ?
これはメインブログの10月30日エントリでお話しています。
松尾匡氏の考察はなにもおかしくないですよ。
「左派こそ金融緩和を重視」
どんな政権がどんな政策を行なうにも財源は必要です。
そのためにはデフレで景気が落ち込んでいるときは、
金融緩和によって景気の循環を良くして経済成長を促し、
税収を増やして財源を確保する必要があるということです。
言わんとしていることは、そういうことです。
ご指摘の、子ども手当てが実現できなかったことを
「公約違反」とする批判は、当時の野党からもありました。
2011年2月27日の公明新聞で、はっきり書いています。
「公約違反の子ども手当法案」
同法案の問題点の第一は「マニフェスト(政権公約)違反」ということです。
民主党マニフェストでは、11年度以降は中学校までのすべての子どもに
月額2万6000円を全額国庫で支給するとしていますが、
この公約が守られていません。
子ども手当てなどの「福祉国家の4K」政策が頓挫したのは、
財源の不足が大きかったのは否めないです。
(自治体に一部子ども手当てを負担させる案も出たことがあった。)
財源の不足を理由にした反対は、実際に強かったです。
経済成長によって財源を確保していたら、
「財源はどうするのか?」という批判は回避できたでしょう。
ところが民主党政権は財源の確保のために
消費税を増税することを実際に検討し始めたので、
支持を一気に落とすことになったのでした。
民主党政権時代に消費税を増税したら、
いよいよ景気が落ち込んで、経済が危機的になったと思います。
民主党にまったく金融緩和の発想がなかったのではなく、
議連が作られ具体的なところまで準備していたのでした。
ところが無理解な首脳部の反対にあい、流れたという経緯があります。
「金融安定化政策と民主党」
「福祉国家の4K」を批判した側が、好ましい態度だったかというと
そんなことはぜんぜんなかったのも確かではあります。
彼らは「民主党の政策だから」つぶすという、
「ためにする批判」にほぼ終始していたのでした。
財源論を持ち出して批判する人たちでさえそうでした。
彼らは財源を確保する手段を示さなかったです。
民主党政権のとき、「福祉国家の4K」が議論されている最中に、
金融緩和で財源確保を提言するのが、本来だと思います。
安倍政権になってから言っても遅いことです。
(それとも提言するかたはいたのでしょうか?
それで金融緩和を進める議連が発足したのでしょうか?)
財源以外の理由を持ち出す人は、もっと「ためにする批判」でした。
「手当てより保育所を」なんて、二者択一の問題に
すり替えるのはまだましなほうです。
「子ども手当てはポルポト」なんて、おおよそ検討に
値しない主張を、自民党が展開してもいました。
自民党と公明党の目的は民主党政権の公約実行を
妨害することですから、「公約違反」という批判も、
自分たちで仕向けたことなのに、「民主党をさらに叩ける材料」
というだけで持ち出したのだろうと思います。
関連エントリ:
「とある左派の経済政策観?」
「金融緩和・雇用の質と賃金」
「財政政策・福祉と公共事業」
「左派こそ金融緩和を重視」