移民の子だくさん幻想の記事に、つぎの指摘があります。
移民・外国人の出生率はフランス産まれのかたより
ずっと高いのですが、彼らがフランスに来る前まで含めると、
ずっと低い出生率になるということです。
「フランスの高出生率を支えるもの--移民の子だくさんという先入観。」
移民・外国人はフランスに移住してから子どもを持つことが多く、
移住前は出生率は低いのですが、国勢調査の統計には、
移住前の出生率はカウントされないから、ということです。
合計特殊出生率は、ある年における、出産可能な年齢の女性のうちの
各年齢の女性の出生率を積分して計算する。
さてトゥルモンの論文では、このように出生率を計算するとき、
移民女性のばあい、それらの女性がフランスに移住してくるまでに
生んだ子供を計算に入れていないということに着目した。
そこで、これらの女性が、フランスに移住してくるまでに
もうけた子供の数を調査し、その子供の数を計算にいれた上で
出生率の計算をやり直すと、
移民女性の1991-98年の出生率の修正値は 2.16 で 2.50よりはるかに低い
という結果を得る。
フランスに入る前にもうけた子の数を計算に入れると
出生率が下がるというのはマジックのようだが、実は次のような事実による。
エントリで指摘があるように、フランスに来る前をカウントすると
出生率が下がるのは、奇妙に思ったかたもいると思います。
じつはわたしもよくわからないのでした。
どの年齢層も出生率は正ですから、それを積分すれば(足し合わせれば)
積分範囲(足し合わせる範囲)が広いほど値が大きくなるからです。
つづけてつぎの解説があります。
移民・外国人の出生率が高くなるのは、フランスに移住してからで、
フランスに来る前は出生率はむしろ低いことについてです。
子どもがいない(少ない)女性がフランスに移住してきて、
フランスに来てから子どもを産むということです。
移民女性の 1/3 は18未満の時に、 1/3 は18歳から27歳までの間に、
残り1/3 は27歳よりあとに移住してくる。
一方、13歳以前に移住してきた移民女性の出生率は
フランス生まれの女性の出生率とほとんど変わらないのに対し、
25歳あるいは30歳でランスに入ってきた女性の出生率は、出産件数から
計算していくと、フランス生まれの女性の出生率にくらべて、はっきりと高い。
が、これらの女性の出産履歴の調査をしてみると、
フランスに移住してくる前の年齢で彼女たちが生んだ子供の平均数は
フランス生まれの女性が同じ年で生んでいる子供の平均数より少ない。
出生率がかなり高いと思われている北アフリカ、サハラ以南アフリカからの
移民女性だけをとっても、移住以前の年齢での出生率は
フランス人のそれとほとんど変わらない。
出生率があがるのは、移住の後である。子だくさんの女性が
移住してくるよりも、子供のいないあるいは子供の数の少ない女性が
移住してきて、そのあとに子供を産むというパターンが多いというのは、
移民女性から生まれる子供の半分はフランス人を父親とするもの
という事実と考え合わせて、素朴な経験的観察に合致する。
ともかくも、機械的に、フランスで集計された
ある年齢の女性の出産数による統計を移民女性のグループにも
適用した合計特殊出生率の計算法では、これらの女性の出生率が
入国以前にはフランス人の平均よりも低いという事実を
計算に入れないので、その合計特殊出生率がみかけ上高く出るのである。
この事情をかなり簡略化して図にすると、つぎのようになるのでしょう。
移民・外国人はフランスへ来る前の年齢領域D1では
出生率が低く、フランスへ移住してきた年齢領域D2で、
きゅうに出生率が高くなるということです。
フランスの人口統計で集計するのは、移民・外国人に関しては、
フランスに移住してからで年齢領域がD2だけ、ということなのでしょう。
この領域にかぎると、
となるので、移民・外国人のみかけの出生率が高くなる
ということではないかと思います。
図のオレンジの部分と、斜線をつけた部分との比較です。
移民・外国人の出生率はD1領域で低い値となっています。
それゆえふつうにD1+D2領域で出生率を計算したら、
D2領域だけで算出する国勢調査の統計でしめされる
出生率の値よりも小さくなるのでしょう。
これがトゥルモンの研究で指摘していることになります。
フランス産まれのかたの出生率は、D1+D2領域で計算します。
移民・外国人の出生率の国勢調査の値は、D2領域だけで計算したものを、
D1+D2領域相当に換算することになるのでしょうか?
そうだとしたらどうやって換算するのでしょうか?
わたしにはよくわからないので、わかるかたがいらしたら
教えていただけたらと思います。
関連エントリ:
「人口政策はやはり男女平等」
「移民の子だくさん幻想」