反証している記事を見ると、日本でフランスの出生率上昇が
家族・ジェンダー政策にあることを否定したい人が持ち出すものとして、
移民のほかに婚外子があることに少し触れています。
「フランスの高出生率を支えるもの--移民の子だくさんという先入観。」
一つは「婚外子」ということばに否定的な価値判断を込めて、
フランスの「婚外子」の多さに高出生率の
陰の部分があるようにみせかけようとする論。
上記の asahi.com の記事が数字を客観的に伝えるように
「2005年に生まれた赤ちゃんの48.3%が婚外子」である。
が、これは現在のフランスのカップルや家族のありかたの
多様性を伝えるものにすぎない。
「婚外子」にさも問題があるかのように語る人は、
単に自分の文化的偏見を示しているにすぎず、
何が問題か客観的なデータで語ることができない。
これはわたしも何度かお話していることです。
「婚外子が少ないから健全?」
「欧州で婚外子が多い訳」
欧米の民主主義国は婚外子の存在が珍しくなく、
フランスやスウェーデンでは半分以上が婚外子となっています。
極端に婚外子の割合が低い日本がむしろ特例です。
「世界各国の婚外子割合」
欧米の民主主義国ではなぜ婚外子が多いのかというと、
1. 婚外子を差別する社会通念がない
2. 婚外子を持っても社会保障や法的な制度で不利にならない。
という事情によります。
欧米の民主主義国にはすでに嫡出概念がなく、
婚外子と婚内子を区別するという考え自体がないです。
少しデータが古いですがスウェーデンの場合、
「平均初婚年齢>第1子出産年齢」となっているくらいです。
結婚せずに子どもを持ってもさほどの不利がないので、
子どもがひとり目のときは、婚姻届けを出さない
カップルが多いということです。
むしろ問題は「なぜ日本では婚外子が極端に少ないのか」です。
日本では「子どもは結婚してから持つもの」という社会通念が強く、
また制度上でも婚外子には不利があります。
日本ではそれだけ婚外子が差別されているということです。
ここには例の「家族思想」に対する「信仰」があると思います。
婚外子は「信仰」に相容れない「異教徒」なので、
社会通念上も忌避され、社会制度からも締め出すものと思います。
「信仰としての家族思想」
「信仰としての家族思想(2)」
「「婚外子」にさも問題があるかのように語る人は、
単に自分の文化的偏見を示しているにすぎず、」というくだりは、
同じ主旨のことを、わたしは書いています。
http://lacrima09.web.fc2.com/teardrops/against/illegitimate.html
反対論者たちは、自分と同じ偏見にまみれた感覚で、
外国でも婚外子が扱われていると、思っているのかもしれないです。
外国の事情は違うことをわかろうとせず、自分の価値基準で、
安易に外国を測るという意味でも、このましくないと言えます。
なぜ「自分の文化的偏見」で「安易に外国を測る」かですが、
これも「家族思想」に対する「信仰」だろうと思います。
彼らは自分たちの「信仰」がグローバルだと思い込んでいるので、
じつは日本国内でしか通用しない狭い世界での偏見、
ということがわからないのでしょう。
2013年12月に婚外子の相続差別が撤廃され、
日本の大きな婚外子差別は制度上はなくなったのでした。
それでも「子どもは結婚してから持つもの」という
意識はまだまだ強いですし、婚外子に対する偏見や
不利がすっかりなくなったわけではないです。
「家族思想」を「信仰」する人たちにとっては、
あいかわらず婚外子は「異教徒」でしょう。
そして自民党内には「家族思想」の維持を標榜する議連もあります。
武藤貴也のように、はっきり婚外子差別の復活をかかげる議員もいます。
このような現状を見ていると、ここでお話したような
婚外子と出生率の関係についての議論は、
まだまだ過去のものとなったとは言えないのだろうと思います。
関連エントリ:
「人口政策はやはり男女平等」
「移民の子だくさん幻想」