2015年05月10日

自民党改憲派の女性観

メインブログの5月6日エントリと、5月9日エントリで、
自民党憲法改正推進本部が発行した憲法改正を解説する
とんでもない漫画冊子についてお話したのでした。

この漫画冊子、内容とは直接関係ないところでですが、
彼ら自民党のジェンダー観がよく現れたしろものになっていると思います。
それを指摘したツイートがあるので、ここにご紹介したいと思います。

漫画にただひとり登場する女性は、ひどく感情的で無知な
キャラクタとして描かれているということです。
ジョークもあるとはいえ、必要以上にこれらが強調されています。
そしてこのような感情的で無知な女性に対して、
まわりの男性たちが教えるというストーリー展開になっています。

さらには「(夫に)ねえ考えてよっ」と言ったりして、
自分の意見が弱く主体性にとぼしかったり、
「エコとロハスは女の必須事項」なんて言ったりするなど、
軽薄というか「お気楽」なキャラクタだったりします。

ようするに、ジェンダーに因習的な中高年男性の女性観が、
無防備なまでにそのままあらわれているということです。
自民党のジェンダー観が「女とはこういうもの」ということなのでしょう。

一般の創作物で、このくらい女性観がステレオタイプすぎて、
偏見があからさまであれば、かなり批判されるのではないかと思います。
自民党の女性観は、世間一般よりもさらに女性に対する偏見が強く
旧時代的で固定観念的であることになりそうです。


つぎのエントリでは、このような指摘もあります。
登場人物が5人いるのですが、女性はひとりだけ(主人公の母親)なのですよ。

「憲法改正を解説するという自民党の漫画が解説漫画としてありえない」
まず、曽祖父、祖父、父、母、息子という男女比の偏りに驚かされる。 

男女の人数に偏りがないようにするというのは、
余計なジェンダーバイアスをかけないために、
漫画や挿絵を使って解説記事を作るときには留意することです。
男性のほうが多いと「男が多いのがあたりまえ」という
固定観念を読者に与えるもとになるからです。

ましてや漫画の舞台は職場ではなく一般家庭であり、
とくに男性が選択的に多く集まるとは思えない場所です。
それでなお男が多い状況を描くというのは、自民党はそれだけ
男性中心的な考えに硬直している、ということだと思います。

これに加えて、この漫画は「男たちが女に教えてやる」という
ストーリー展開であり、男女で役割がきっちり別れていて、
それは男性のほうが女性より優位な立場です。
ジェンダーバイアスのもとになる描写は人数だけではないのであり、
「ジェンダーバイアスをかけないよう留意する」という、
いまどき常識的と思われることさえ、ふまえていないことになります。


漫画に登場する唯一の女性は、唯一の改憲反対派でもあります。
改憲に反対する人は、無知で感情的で主体性がなく
「お気楽」なキャラクタであるというメッセージも、
この漫画冊子は発していることになります。
これが自民党の改憲派たちの、改憲反対派に対する認識なのでしょう。

つぎの指摘がありますが、この漫画は憲法改正について
解説したというより、「理性的な改憲派」が
「無知で感情的な改憲反対派」をいかにして手なずけるかを
描いたものだということになりそうです。

この漫画は母の視点に立っていない以上、「解説」を目的としたものではない。
自説を演説するものですらない。憲法改正を不安がる人々を安心させるよう、
説得する情報を教える漫画だ。
あえてジャンルわけするなら折伏漫画といったところか。 

もっとあからさまな言いかたをすれば、
この漫画冊子は「女性」や「改憲反対派」に対する彼らの偏見を
表現したかったのだ、ということだろうと思います。


創作物というのはフィクションゆえに作者の思想や
カチカン、ものの考えかたが反映されやすくなります。
自民党の憲法改正の解説冊子が、漫画という方法を採ったことで、
ふつうに解説記事を書いたのでは現れない、
彼ら自民党のジェンダー観や改憲反対派のイメージを
あらわしてくれたと言えそうです。


関連エントリ:

「自民党・改憲の解説漫画」
「自民党・改憲の解説漫画(2)」


posted by たんぽぽ at 17:46| Comment(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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