2015年05月02日

入試で下駄を履く男の子

4月28日エントリで、日本の高等学校は、入学試験で男子の受験者に
下駄を履かせて合格させていて、入学後も女子のほうが男子より
成績がよい傾向にあることを、否認したいらしいツイートを紹介しました。

「女子は男子より成績がよい」
「学校で下駄を履く男の子」
「学校の入試でも男子は下駄を履いているようです」

おなじかたが、こんなこともツイートしています。
男子と女子とで入学枠をべつに設定しているから、
男女で合格点数に差が出るのはとうぜんだと言うのです。
男子が下駄を履いている現状を、当然と思っているみたいです。




なぜ男女で合格点に差を付ける高校があるのかというと、
家庭の事情で男子のほうが、大学入試に自由度が大きいからです。
経済事情が苦しい場合、男の子ならちょっと無理してでも
大学に行かせることはありますが、女の子なら大学をあきらめて、
親もサポートに積極的にならない、ということはざらにあるでしょう。

男子なら浪人も許されるが、女子には浪人は許さないとか、
男子なら親元から遠く離れた大都市圏の大学でも容認するが、
女子なら家から通えるくらいの大学でないと認めない、
といったこともあると思います。

かくして女子のほうが成績がよくても、大学進学に関して
自由度がせまいため、あまりいい大学に入れないことが多くなります。
大学進学に自由がある男子のほうが、成績が下位でもよい大学に
入る傾向となるので、大学合格実績をよくしたい高校は、
男子に下駄を履かせて入学させることになります。

女子のほうが成績が悪いから、大学に入れないわけではないので、
女子も大学受験に関して自由が制限されず、男子とおなじように
自由に大学進学が許されるなら、女性のほうが男子より
大学合格実績がよくなることになるでしょう。


実力と関係なく、女性差別的な社会構造があるため、
男子に下駄を履かせて優先的に合格させるのは、
企業が女性の出産や育児による退職を理由に、男子に下駄を履かせて
優先的に採用や昇進させるのと、おなじ構造ということになります。

「女子は優秀でも採らない」
「女子は優秀でも採らない(2)」

家庭の事情で男の子と女の子とで、教育方針が異なる理由は、
ひとつには日本は大学教育への公的サポートがすくないことがあります。
日本は大学の授業料が高く、奨学金がすくないOECD加盟国中唯一の国です。
大学進学に関して経済的な負担が大きいことが、
女子が大学進学で自由度が狭くなる原因のひとつとなるわけです。

「学費は高いわ援助はないわ・・・日本の高等教育@OECD」

Average tuition fees (USD) vs. the percentage of students receiving public subsidies for higher education, 2008-09


付記:

このエントリは、メインブログの4月25日エントリでいただいた、
ritiarnoさまのコメントを参考にしました。
ありがとうございます。

この点についてですが、選抜者側は女子の方が学業成績が良いことは
百も承知の上で、男子に下駄を履かせていますね。

その理由は、女子の方が学業成績は良くても、男子ならば浪人OKだが女子はNG、
男子は親元離れて大都市圏の私大進学もOKだが、
女子は地元国公立大以外NGといった、家庭方針による様々な制約によって、
女子生徒は現役合格確実なところしか受けない傾向が強くなり、
学業成績が同程度の男子生徒と比べて大学合格実績の面で
著しく振るわなくなるので、女子は成績優秀でも落とし、
男子は成績が劣っていても下駄を履かせて合格させて
高校の大学合格実績を高めようという「統計的差別」のインセンティブが
選抜者側に働いてしまうからす。

その例として、都立名門校はかつて男子の入学定員を
女子の3倍ほども多く設定していましたし、
北海道でも名門校が男子に1ランク以上にも相当する点数を加算して入学させ、
偏った男女比率(男子の方が3倍ほども多かったらしい)から
女性差別として問題になったことがあります。

今ではまだマシになったと言えますが、
公立名門校が男女別学になっている所(埼玉、栃木、群馬)は、
男子校と女子校で入試レベルはあまり違わないのに、
男子校は東大のよう難関大や東京の有名私大が多いが、
女子校は地元国立大への進学が多いといった、
大学合格実績の面で顕著な差があります。

これは、企業が女性の出産による退職リスクを根拠に
採用・研修・昇進で女性差別人事を行ってしまうのと同様の構造です。

家庭の方針が息子と娘で大きく違う理由は、
たんぽぽさんの↓エントリのデータにあるように、
高等教育への投資効果が芳しくないからに他なりません。
http://taraxacum.seesaa.net/article/408984381.html

結局のところ、社会における女性差別構造を解消させない限り、
学校や家庭にまで差別の連鎖が波及してしまうのだと思います。


posted by たんぽぽ at 18:24| Comment(2) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
まったくひどい話ですね。
Posted by m13 at 2015年05月07日 15:56
m13さま、いらっしゃいませ。
こちらにもコメントありがとうございます。

>まったくひどい話ですね

賛同ありがとうございます。

ツイートの人は、女性のほうが成績下位で入学していたら、
おなじように「合格点数にある程度差が生ずることは回避しがたい」と、
言うのかと思います。
Posted by たんぽぽ at 2015年05月07日 23:07
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