日本に世襲政治家が多い理由について、お話したのでした。
「日本に世襲議員が多い理由」
「日本に世襲議員が多い理由(2)」
なぜこんなことをきゅうに書く気になったかというと、
つぎのエントリを見たから、ということもあります。
これらで世襲政治家についての批判があるのですが、
わたしには納得できないことだったりします。
「マックス・ウェーバーと鳩山由紀夫」
「私の「格差・再分配」論 & 「日本スゴイ」論批判」
>日本人は世襲信仰が強い?
ひとつ目のマックス・ウェーバーのエントリでは、
いちばん最後にこんなことを書いています。
「日本人には世襲信仰が強い」と言っているのですが、
そんなことはべつだんないと、わたしは思いますよ。
世襲議員をありがたがることをしめす世論調査もないと思います。
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それもこれも、鳩山由紀夫のような無能な世襲政治家を
国政に送り出した選挙民こそまず第一に責められるべきだ。
日本人の世襲信仰がなぜここまで強いのか、私には全く理解できない。
最近では小渕優子を支持する選挙民に対して非常に強い嫌悪を感じた。
また、小渕が表向き「脱原発派」的な言動をしていたからといって
小渕に同情したり庇ったりしていた「リベラル」たちに対しても
きわめて強い不満を持ったものである。
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日本が世界的に見て異様に世襲議員が多い理由は、
メインブログのエントリでお話したように、大きくつぎの3つです。
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1. 当選回数主義
2. 政治家城下町
3. 閨閥の衰退
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これらはいずれも自民党やエリート選抜のシステムの問題です。
こうしたシステムによって世襲議員が多く残る体質になっているので、
世襲議員の割合が高くなり、世襲議員を支持する有権者の数も
おのずと多くなる、ということだと思います。
世襲議員が多いのは、そういう政治家を支持する
有権者の資質の問題ということにするのは、責任の矛先としては
「わかりやすい」ので、世襲政治家批判としてはありがちだと思いますが、
わたしに言わせれば本質ではなく、解決にはならないと思います。
>格差、再分配と世襲政治家
ふたつ目のエントリでは、格差論と関連づけて世襲問題を議論しています。
日本では富の再分配がじゅうぶんなされていないから、
格差ができて世襲議員が有利になると考えていそうですね。
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世間一般に持たれているイメージとは異なり、私は「富の再分配」は、
戦争によってリセットされずとも各分野において
真に実力のある者が指導する社会をつくるためにこそ必要だと考えている。
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日本に世襲政治家が多い理由は、上述の1.-3.ですが、
どれも格差や再分配機能とは関係ない、システムの問題です。
3.の閨閥は男性中心ですし、民主主義社会と相容れない
性質のものとはいえ、出自に関係なく可能性が開かれているし、
実際むかしの日本は庶民出の宰相が、何人も現れていたのでした。
閨閥が衰退して世襲が幅を効かせるようになったのは、
優秀な人材が政界を目指さなくなったため、
自分の娘や息子に継がせざるを得なくなったことがあります。
優秀な人材が来ないから世襲が多くなるのであり、
世襲政治家が優秀な人材を押しのけているのではないです。
上記エントリはさらにこんなことも書いています。
世襲が「下駄」を履いていると言いたげですね。
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今の日本に必要なのは、世襲というハンデが撤廃された実力の競争だ。
特に国政の世界においては、実力の競争はどんなに厳しくても
厳しすぎることはない。しかるに、現在の政界は世襲政治家天国である。
一種の「貴族政治」であるといえる。
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自民党以外の議員も含めた一般的傾向ですが、
活動資金や生活費の問題があるので、資産のない庶民は政治家を続けにくく、
相対的に資産のある世襲議員が有利、ということがあります。
よってハンデとは「世襲が有利になっている」のではなく、
「世襲でない庶民が不利になっている」と考えたほうが妥当です。
実力主義のために格差是正や再分配が大事だというのでしたら、
政治家をこころざす一般市民が、お金で困らないよう
彼らの活動資金や収入を保証することを考えたほうがいいでしょう。
付記:
活動資金に関しては、「kojitaken」氏につきましては、
政党助成金に反対する人を批判するところから
はじめるのがよいだろうと思いますよ。
そういうかたは、お近くにたくさんいることと思いますので。
関連エントリ:
「日本に世襲議員が多い理由」
「日本に世襲議員が多い理由(2)」