その事情について解説した記事があるのでご紹介します。
「安倍首相、消費増税めぐる財務省の政界工作を示唆
省益優先で不況下に緊縮財政の罪」
(はてなブックマーク)
常識的に知っているかたもいらっしゃるのでしょうが、
あらためて見ておくことにします。
簡単に言えば「自分たち財務省の利益のために」です。
ある意味「とてもわかりやすい」と言えます。
税収を増やせば自分たちが自由に裁量できる予算が増えます。
それは官僚にとって自分たちの権限が増えることを意味します。
その結果、天下り先の確保とか、ほかの省庁に対する
優位性の維持ができて、権力を保てるということです。
自分たちの権力の拡大こそ、官僚の最大の関心ということです。
財務省の予算編成に関わる部局は、
できるだけ自由裁量的な予算を獲得しようとする。
その理由は将来の天下り先への影響、財務省の他省庁に対する
優位の確保などの「省益」がその根本的な理由だ。
しかし、不況になると税収減によって予算総額が圧縮されるため、
そのような自由裁量の余地が難しくなる。
加えて国債発行増額への要求は自然と高まる。
不況で税収が減ると、財源確保のため国債発行の要求が高まります。
財務省が国債の発行を嫌がるのもおなじ理由です。
国債は将来返済しなくてはならない「固定費」ゆえに、
国債が増えると自分たちの自由裁量の余地が減ると、
彼らは考えているからです。
国債は将来返済しなくてはいけない「固定費」であるため、
将来的な財務省の自由裁量の幅は、(将来の)好不況に関係なく
「固定費」が増えれば増えるほど制約されると考えてしまう。
したがって、現時点では経済が不安定であるにもかかわらず、
財務省は国債発行に慎重になり、緊縮財政を志向してしまう
ここには国民全体の幸福はまったく念頭になく、
ただひたすら自分たちの「省益」だけを考えているということです。
「国民を甘やかすことになる」発言が、どれだけ盗人たけだけしい
思い上がったもの言いであるか、というものです。
こんな自己中心的な理由で、政府が国民生活や社会全体の
影響をかんがみて増税の見直しをしたり、
自由に国債を発行したりできなくなるというのは、
はなはだ深刻に困ったことと言わざるをえないです。
消費税増税によって景気がおちこんで、税収がかえって
減ることもあるではないか、過去に実際にそうなったこともあった、
という意見もあると思います。
財務省はなぜかそういうことはまったく考えないようです。
十分な巡航速度に到達していないのに
大規模な増税をすれば、経済は必ず失速する。
税率を上げても十分な税収が手に入るかは不透明なはずだ。
だが、そのような経済学の初歩的常識は、財務省には通用しないようだ。
付記1:
財務省は自民党の議員のところにも関係者を送り込んで、
消費税増税のために「ご説明」していたことが記事に出ています。
財務省が政権与党の議員に切り込むのは、とうぜんとは言えますが。
これによって消費税10%への増税を延期することが目的だった
「アベノミクスを成功させる会」という議連の参加者が、
最初の3分の1に減ったとあります。
財務省の「ご説明」がいかに説得力のあるものかが伺えます。
例えば「アベノミクスを成功させる会」(会長・山本幸三衆院議員)の
参加者切り崩し工作が最近では有名だ。
同会は消費再増税を延期させることが真の目的で、
当初の参加者は45名だったが、 財務省職員の熱心な「ご説明」を受けて
半月後には 会合出席者が3分の1に激減してしまった。
また、財務省は与党幹部や有力政治家への「ご説明」に
人材を配分して熱心に行い、 政治家を再増税賛成に
取り込んでいく手法もみられた。
付記2:
財務省のかかる「合意形成戦略」は、国民一般からは
見えにくいように行なうから巧妙です。
1998年に発覚した旧大蔵省接待汚職による世間からの猛烈なバッシング、
その後の大蔵省分割・再編を経て、財務省の政治家・マスコミ・業界団体などへの
説得工作はステルス化(隠密化)したと指摘されている。
これらは氷山の一角であり、財務省の政治工作の全貌は
国民の目からはまったくみえない。 そして特定の政策を実現するために
動く財務省は、 すでに国会内の見えざる大政党として機能している。
メインブログの11月29日エントリでご紹介したように、
「ご説明」のようすを記事に書いてくれるかたがいたから、
わたしも状況を多少知ることができたのですが、
そうでなければぜんぜん知らないままだったと思います。