批判的に見ている記事を紹介したのでした。
「第4回 「少子化対策」というと「若年女性」に突如関心」
そこで「若年女性が地方から減る」という注目のしかたが、
警戒心や不信感、性的な気持ち悪さを沸き起こすというお話をしたのでした。
「Love Piece Club」の日本創成会議の提言書批判ですが、
ここでは最後のほうにあるつぎの箇所に、わたしは注目したいと思います。
よくぞこれを言ってくれましたと、わたしは思いましたよ。
ライフスタイルの選択を尊重しよう、夫婦別姓の選択くらい認めよう、
なんて提言もなし。ひとり親家庭への支援強化は辛うじて掲げられているけど、
非婚の母に所得税法の寡婦控除の適用がないことを是正しよう、
といった提言もなし、婚外子差別解消もなし。
子ども手当や高校無償化に所得制限が復活した問題にも一切触れず…。
これらが言及されないのは、彼ら(というか安倍政権)が、
いまもって「家族のカチ」幻想を維持したいからだろうと思います。
例の「夫が外で働き妻が専業主婦というのが理想の家族」という
高度経済成長期に定着した家族イデオロギーです。
夫婦別姓や婚外子、母子家庭は、「家族のカチ」幻想からはずれるので、
認められなかったり権利を無視されたりするということです。
婚外子の相続差別は昨年の12月の民法改正で撤廃されましたが、
これは最高裁の違憲判決があったためです。
最高裁判決が猛烈に不満だった議員もたくさんいて、
彼らは「家族のカチ」幻想を守るための議連を作ったのでした。
専業主婦を守るための配偶者控除を廃止することは、
お金が絡むからなのか安倍首相が指示しています。
それでもこれも「家族のカチ」幻想を守るための議連が反対していますし、
実現するかどうかはわからないです。
日本社会が将来にわたって経済力を維持するためには、
「女性の活用」なるものが必要だから、それはそれで認めることにするが、
それでも「家族のカチ」はできるかぎり維持したいという
矛盾した欲求があるということでしょう。
子ども手当てや高校無償化のことも触れられないですね。
子育てに直接的な給付をすることや、教育にかかる負担を減らすことは、
少子化対策として重要ですから、本来なら言及があっていいはずです。
5年前に子ども手当てや高校無償化を攻撃したのは、
ひとえに民主党の政策だから否定したいという近視眼的動機と、
官僚の裁量が入らないので、官僚に嫌がられたことが大きいと思います。
とくに子ども手当ては「ばらまき」とか「ポルポト」とか言われたり、
排外主義者が露骨なデマを広めたりもしたのでした。
ほかに言及がないこととして、10年前にさかんだった
ジェンダーフリー・バッシングがあると思います。
彼らはジェンダーフリーは家族破壊だと喧伝し、夫婦別姓を否定したり、
性別役割分担の重要性を強調したり、女性の労働力率と少子化に
関係ないことを証明することに血道をあげていたのでした。
少子化対策として重要である「女性活用」の真っ向からの否定です。
本来でしたら、かつてのジェンダーフリー・バッシングにも
批判的な言及があってもいいはずです。
性教育もジェンダーフリー・バッシングのやり玉に挙がりました。
おおよそ性的なものを忌避する彼らは、七生養護学校を「いけにえ」にして、
「過激」と称して性教育を学校から抹殺しようとしました。
ここには安倍晋三氏も重要な貢献をしていたのでした。
「家族のカチ」信仰のことや、5年前の子ども手当てたたき、
10年前のジェンダーフリー・バッシングに触れないのは、
なにも日本創成会議の提言書だけのことではないですね。
現在なされている少子化対策の議論は、
ほとんどどれもこれらについて言及がないと思います。
わたしの見たかぎり3月26日の東京新聞だけは、
選択的夫婦別姓を認めることが試金石だとはっきり書かれています。
それ以外は夫婦別姓について言及のあるものはないようです。
「安倍政権・女性活用の不信」
配偶者控除を廃止する代償として、子育て世代になんらかの
支援をすることは、複数の議論の中で提言されています。
それでももっとも効果的でわかりやすいと思われる
子ども手当てを見直そうという意見は出て来ないのでした。
「配偶者控除廃止の議論」
「配偶者控除見直しの記事」
「子ども手当ては財源の不足で実現できなかった
民主党政権時代の失敗した政策であり、この期に及んで検討に
値するものではない」ということにでもして、
わざと言わないでいるのかもしれないと、ちょっと思っています。
子ども手当てを叩いたり、ジェンダーフリー・バッシングを
していた当時は、少子化対策の必要性なんて、
日本社会はすこしも感じていなかったのでした。
このままいけば少子高齢化社会が来て、危機的となるのは予想され、
少子化対策の必要性については、なにをしたらいいかまで
さんざん議論がなされていたにもかかわらずです。
これらを失敗だったとして顧みようとしないのは、
少子化対策は緊急の課題と言いながら、じつはまだそれだけの
余裕があるつもりでいるということだろうと思います。
まだまだイデオロギーや、民主党の政策を否定したいといった
感情的なことを優先していられるからです。
本当に切羽詰まっていると思ったら、イデオロギーや
感情的なことなどに、かかわっていられなくなるでしょう。
これらが過去の愚策だったことを受け入れて、
後悔するようになるには、もっともっと追いつめられる必要がある、
ということかもしれないです。