2014年06月11日

美味しんぼのがれき表現

メインブログの5月19日エントリで、『美味しんぼ』の鼻血表現に
根拠のない描写があることをお話したのでした。
ほかにも『美味しんぼ』には、大阪で震災がれきの焼却によって、
放射線障害の症状が出た人がいると示唆することも描かれていました。

『美味しんぼ』の描写はつぎのようです。
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「大阪で、受け入れたガレキを処理する焼却場の近くに住む
住民1000人ほどを対象に、お母さんたちが調査したところ、
放射線だけの影響と断定はできませんが、眼や呼吸器系の症状が出ています」
「鼻血、眼、のどや皮膚などに、不快な症状を訴える人が約800人もあったのです」
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大阪ではがれき処理によってこのようなことが起きた事実はないです。
これは大阪府が公式サイトで、はっきりと釈明しています。

「漫画『美味しんぼ』での本府の災害廃棄物処理に関する記述について」
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これについては、大阪市が、処理を行った焼却工場の存在する此花区役所、
同保健福祉センター、此花区医師会に確認をしましたが、処理中においても、
その後においても、そのような状況は認められませんでした。
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とうぜんながら大阪府と大阪市は『美味しんぼ』に抗議をしています。

「がれき処理の大阪府市「美味しんぼ」に抗議 「不適切」」

大阪で処理した震災がれきについての詳細も、大阪府の公式サイトに出ています。
大阪で処理したがれきは、岩手県の宮古地区のものです。
福島第一原発からの距離は、首都圏とさほど変わらないくらい離れたところです。
こうした場所のがれき処理で、放射線障害が出るとは思えないですね。

「岩手県の災害廃棄物の受入れについて(処理は終了しました)」



さらに震災がれきを焼却した大阪の処理場について
調べた記事があるので、ご紹介したいと思います。

「「美味しんぼ」言及の「がれき処理焼却場近くに住む1000人」の住まいはどこだろうか」

震災がれきを焼却処理した「大阪市環境局舞洲工場」は、
地図で見るとわかるように、埋め立て地の中にあります。
東側にユニバーサルスタジオ・ジャパンがあるのもわかります。

まわりは工場ばかりで、近くには一般の住宅は見当たらない場所です。
いちばん近い住宅地は、南東に1.5-2キロほど離れています。
付近に住民なんていないところですね。
『美味しんぼ』に描いてある「焼却場の近くに住む住民1000人」
というのは、いったいどこにいるのかと思います。







『美味しんぼ』が参照した「調査」とはなんなのかと思います。
「お母さんたちが調査」「不快な症状を訴える人が約800人」などの記述から、
「大阪おかんの会」によるものらしいことがわかったのでした。

https://twitter.com/katot1970/status/465815474052141056
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800人が症状を訴えてるって事なのでこれで正解かとRT @Nagapiii:
おいしんぼのネタ元は「大阪おかんの会」という噂ですけどねぇ… 
他にもっとマシなデータあるのかな?ちなみに木下黄太もこのデータ引用しとる。
 http://bit.ly/1ja6VlU  @kikumaco
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「大阪おかんの会」の2013年3月26日エントリにデータがあります。
1505人を調査したところ、806人に症状の報告があったそうです。

「大阪で119番通報が激増!体調変化レポートNo,10(〜3/13)」

ところが大阪市にかぎると219人なのですよね。
大阪市以外の大阪府や、兵庫県、京都府、滋賀県、奈良県、和歌山県からの
報告があって、これらを合わせて806人ということです。
あきらかに「焼却場の近く」でない住民が多く含まれていますね。

「大阪おかんの会」によると、「回答は自己申告のまま
集計しており、実際に症状が出ているのか、
回答者が実在するのかなどは確認はしていない」とあります。
実際に症状が出た人がいたのだとしても、がれき焼却による
放射線被害かどうかも、確認していないのだろうと思います。


『美味しんぼ』に描かれた、大阪での震災がれき処理による
放射線被害についての顛末は、つぎの記事がくわしいです。
雁屋哲氏は「大阪おかんの会」には直接の取材はしていないらしいです。
「大阪おかんの会」は「何の連絡もなく、突然違う内容で
掲載された」と困惑」しているとコメントしています。

「府市 異例のスピード抗議 美味しんぼ「がれき処理、大阪で健康被害」」


付記:

『美味しんぼ』の大阪でのがれき処理による健康被害に関するコマ。




posted by たんぽぽ at 23:05| Comment(0) | 疑似科学(にせ科学) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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