2014年03月13日

少子化白書と婚外子問題

3月10日エントリで、『ビジネスジャーナル』の江端智一氏による
「出産させないシステムが完成した日本」というコラムに出ていた、
「女性を取り巻く、理不尽な環境」というイラストをご紹介しました。

今度は記事本文を見ていくことにします。
(じつはこの記事、わたしには「?」なところがなきにしもあらずなのですが。)

「出産させないシステムが完成した日本〜破滅衝動=結婚をなぜ越えられないのか?」
(はてなブックマーク)



記事では、内閣府の「平成25年版少子化社会対策白書」を取り上げて
ここに出てくる対策の方針について触れています。
「3本の矢」と呼んでいるアプローチでつぎの項目があげられています。
1. 子育て支援
2. 働きかた改革
3. 結婚・妊娠・出産支援




ところが記事著者は、この「3本の矢」にいささか懐疑的なのですね。
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最も重点を置いているのは、出産後の育児支援体制です。
まず法律で枠組みをつくり(「枠」)、設備(育児施設)をつくり(「箱」)、
国民の意識の改革を目指す、という流れになっています。
特に、「枠」と「箱」の話が多い。
いや、むしろ「枠」と「箱」の話ばかりのように読めました。
児童手当制度、教育・啓発普及、地域環境、妊産婦の経済的負担軽減、
保育所待機児童の解消、小児医療の充実、ひとり親家庭への支援……。

ここから導かれる内閣府の少子化方針の意図は明確です。
つまり「出産後のアフターサービスは任せておけ」です。
そして、「アフターサービスが完璧なら、子どもは増えるはずだ」という、
少子化に対する間接的、二次的なアプローチなのです。
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これらの政策は何年前からかお役人たちが熱心に研究している
フランスの事例にならったものと考えられます。
記事著者もあとのほうで、フランスをケーススタディとしていると考えています。
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内閣府の少子化白書の「アフターサービス戦略」は、
おそらく、フランスをケーススタディとしていることは、
ほぼ間違いないと思います。(「フランスとドイツの家庭生活調査」より)
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フランスの事例はおおいに参考になることが、各方面から指摘されているし、
日本でも積極的に導入してしかるべきことだと思います。
少子化対策としては正攻法ではないかと思うところです。


なにがふじゅうぶんなのかと記事を読んでいくと、
日本の「少子化白書」は、婚外子差別の解消について言及がないこと、
そして妊娠・出産の前提として結婚があることが挙げられているのですね。

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「フランスでは、同棲による婚外子が一般的である」という点です。
婚外子とは、法的に婚姻関係にない男女から産まれた子どものことをいいます。
フランスで産まれてくる子どもの半分は婚外子ですが、
日本での婚外子は出生全体の1.9%(2003年)にすぎません。
(「先進諸国における婚外子増加の背景」より)

フランスでは、1990年代に、婚外子の親権共同行使が原則化されて、
子どもの養育のための経済的負担は婚姻内外、
離婚の有無を問わず男女平等に求められ、
支払わない者に対しては国が強制徴収を行うという徹底ぶりです。
比して、我が国ではどうでしょうか?

内閣府の「少子化白書」の「3本の矢」の最後の矢は、
「(3)結婚・妊娠・出産支援」でした。この項目から「結婚」は外されていません。
そもそも、我が国は、婚外子を差別的に扱うことを法定してきた
という歴史的経緯があり、ようやく最近になって、
婚外子の遺産相続分を結婚した夫婦の子の半分とした民法の規定が
違憲と認定されるに至ったという状況にあります。
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婚外子のことも大事であり、考慮に入れる必要があることですね。
婚外子の問題にも注目しているのは、このましいことだと思います。
2年前にメインブログで紹介した、フランスの国立人口研究所の分析でも
婚外子が増えたことを出生率回復の原因のひとつに挙げています。

「フランス:プチベビーブーム 4年連続、出生率「2」超え」
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(3)結婚より手続きが簡単で、ほぼ同等の税控除などを
受けられるパクス法の制定(99年)で婚外子が増えた
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3月2日エントリで紹介した出口治明も、フランスで出生率が
上昇した原因として、「シラク3原則」に加えて
「婚外子を差別しないPACS」の導入があったことを挙げていました。


スウェーデンでは「平均初婚年齢>平均第一子出産年齢」となっていて、
多くのカップルが結婚せずに子どもを産んでいることになります。
これは婚外子が差別されないこともありますが、
法律婚をせずに子どもを持っても法的な保護があり
税制や福祉での不利益もすくないこともあるのだと思います。

日本でも「結婚してから出産」というライフスタイルから脱却するためには、
婚外子に対する社会通念を改善していく必要もありますが、
結婚せずに子どもを持っても不利にならないよう、
法的な保護や税制、福祉を整備する必要もあると思います。
(税制や福祉における扱いが社会通念を変えて行く部分もあると思うので。)

内閣府の「少子化白書」で婚外子の問題が出て来なかったのが
なぜなのかは、わたしにはよくわからないです。
国民の大多数に「結婚してから出産」という社会通念が強くあるので、
具体的施策もそれを前提としないと「非現実的」と思ったのでしょうか?



posted by たんぽぽ at 19:07| Comment(0) | 民法改正一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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