少子化についてのインタビュー記事についての続きです。
具体的な少子化対策について述べたところを見ていくことにします。
わたしがこれまでお話してきたことと重なっていることもあって、
同感できるところも多いですよ。
「少子化は文化を滅ぼす 仏の「シラク3原則」に学べ
ライフネット生命 出口治明会長インタビュー」
ご存知のように、日本ではとくに家族に関して因習・反動的な人たちに、
「子どもは家で母親が育てるべき」という論調が根強いのですね。
つい先日も埼玉大学の名誉教授がそれを言って、物議をかもしたのでした。
出口治明氏は具体的に数字を挙げて、女は家庭で育児をするべき
というのは非現実的だとはっきり言っています。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3609?page=2
2010年の国勢調査によると、夫婦と子どもからなる世帯は全体の28%しかいない。
ひとり親と子どもの世帯は9%。カップルで子どもを育ててそれが日本の伝統だ
という「標準世帯モデル」にこだわる議論は、現実を見ていません。
古き良き高度成長期の夢を見ているとしか思えません。
現在の標準世帯は31%をしめる「おひとりさま」です。
「夫が外で働き妻が専業主婦」というのは、高度経済成長期の家族観で、
21世紀の現在に合わなくなっているのは、わたしがよくお話していることです。
出口氏治明も「「標準世帯モデル」にこだわる議論は、現実を見ていません」、
「古き良き高度成長期の夢」と、はっきり言っています。
(これくらいはっきり言ってくれると、うれしくなってきます。)
「それが日本の伝統だという「標準世帯モデル」」ともあるので、
家族に因習・反動的な人たちが「伝統」と言っているのは、
高度経済成長期のもので、それほどむかしからあったものではないとも
(ここでははっきり言っていないですが)、考えていそうですね。
つぎのパラグラフは、少子化対策にあたっては、
まず女性の自己決定権を最優先で尊重すること、
そしてシングルマザーとか事実婚とか、家族構成や婚姻状態に関わらず、
子どもと母親をケアすること、そして赤ちゃんが産まれたら
社会全体で祝福しサポートすることを述べています。
社会の制度や意識がこれくらいになれば、きっと子どもも増えるでしょうね。
子どもは社会の宝です。もちろん、産む産まないは100%女性の自由です。
女性が決めればいい。その上で、子どもを産んだ女性は、
働く上でハンディがあるわけですから、みんなでケアする。
シングルとかダブルとか、あるいは法律婚か事実婚かを問わずに
赤ちゃんを産んだ女性には「赤ちゃんを産んでくれてありがとう」と言って、
みんなでケアするシステムが必要です。
現状の日本社会は、とてもこのようにはなっていないですね。
「女性手帳」を配ろうとか、少子化を女性の意識のせいにしたり、
シングルマザーへの風当たりは強いし、婚外子差別も先日まであったし、
マタニティマークやベビーカーを邪険に扱う人が多いし、
「子どもは社会全体で育てる」という子ども手当ての理念を
「ポルポト」などと言いがかりをつけてつぶしたりですね。
(上記引用箇所の前にある「人間は何のために生きているか。
動物なのだから、次の世代のために人間は生きているはずです」
というくだりは、わたしには「?」かな。動物に目的はないでしょう。)
保育所の不足、待機児童については、つぎのような見解です。
待機児童が解消できないのは、予算の投入が不足しているからとしています。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3609?page=3
外国人から見れば、90兆円規模の予算をつくっている国が
10年以上の年月をかけて待機児童をゼロにできないのは理解できないでしょう。
すくなくとも出口治明氏は、日本は経済規模に見合うだけのお金を、
子どものために出していないと見ているということです。
(実際に外国人がこのようなコメントをしたのかどうかはわからないが。)
まだまだお金を惜しんで本気で少子化対策をしていないということですね。
このあとに「フランスのようにワンセットの政策を直ちに実行する。
小出しはいけません」というコメントがあります。
さまざまな政策をいっぺんにやるのが大事であると考えているわけですね。
認可外の保育所については、いろいろと意見があると思いますが、
認可とか認可外とか保育所とか幼稚園とか区別するな、という意見です。
供給が足りないんですから、供給者の資質は一切問わない、とすればいい。
認可も認可外も、幼稚園も保育園も、何の区別もしないと、総理が言い切る。
PACSと同じことですね
前にも「シングルとかダブルとか、あるいは法律婚か事実婚かを問わずに」と
コメントをしていましたが、「わけへだてを一切するな、
みんな公平に扱え」といのが、出口治明氏の考えの基調のようですね。
政府や行政が公平性を確保するというのは、大事なことだと思います。
自由な社会においては、政府や行政が国策で国民生活を
特定の方向に導こうとするのではなく、どんな立場にある国民でも
暮らしやすいような基盤を整えるべきだからです。
すくなくとも、日本はそういう自由な社会を実現しようと思えば
実現できる状況に来ているはずなのですよね。
家族に対して因習・反動的な人たちが維持しようとする、
高度経済成長期の家族観は、政府や行政が国民の「あるべき家族」を決めて、
その方向に導こうとする考えにほからないです。
それは「あるべき家族」を優遇することであり、どんな国民に対しても
公平性を確保する、というスタンスとは対極的なものです。
家族観に対しても公平性を重視する時代になっているのに、
すでに時代に合わない「あるべき家族」に、いつまでもこだわるので、
あちこちでひずみが出て、少子化も進んでいるとも言えるでしょう。