ライフネット生命出口治明会長のインタビュー記事が載っています。
よそではあまり見かけないお話をしているので、いつもと違った視点の話題を
見たいかたのために(なんているのかな?)、ご紹介したいと思います。
「少子化は文化を滅ぼす 仏の「シラク3原則」に学べ
ライフネット生命 出口治明会長インタビュー」
(はてなブックマーク)
はじめに、記事のタイトルにもなっているので、
2ページ目のフランスについてのお話を見てみたいと思います。
フランスはご存知のように、少子化対策が功を奏して
出生率が回復している国として定評があるので、
少子化対策を議論する人が、しばしば引き合いに出す国ですね。
ここで出生率回復のための「シラク3原則」が紹介されています。
1つめは、子どもを持っても新たな経済的負担が生じない、
2つめは、無料の保育所を完備、
3つめは育児休暇から女性が職場復帰する際、
ずっと勤務していたものとみなして企業は受け入れる。
この3原則と、婚外子を差別しないPACS(民事連帯契約)を、
ワンセットの政策パッケージとして導入しました。
1に関しては、メインブログの2月28日エントリでお話した、
内閣府の「選択する未来」委員会で岩田一政氏が提出した資料に、
日本とフランスの育児給付の比較の図が出ています。
これをここでも紹介しておくことにします。
「子ども増えるほど育児給付手厚く」
もう2年前ですが、メインブログの2012年2月5日エントリで、
フランスの高い出生率を取り上げた毎日新聞の記事を紹介しています。
この記事によると、フランスの国立人口研究所による
出生率向上の分析はつぎのようになっています。
上述の「シラク3原則」+「PACS」の政策パッケージは成果を出していると言えます。
(1)男女平等意識の浸透や育児休暇制度、
保育施設の拡充などで女性の子育てと仕事の両立が容易になった
(2)子どもの多い家庭を優遇する手当と税制度
(3)結婚より手続きが簡単で、ほぼ同等の税控除などを
受けられるパクス法の制定(99年)で婚外子が増えた
ここでわたしの興味を惹くのは、フランスが出生率回復のための施策に
力を入れることになったモチベーションとして、フランスの文化を守り、
フランス語を話す人を増やしたい、ということがあることですよ。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3609?page=2
1980年代から90年代にかけてフランス人は徹底的に議論し、
フランス文化を守るべきだということが国民のコンセンサスになりました。
文化は言葉。フランス語を話す、フランスで生まれる赤ちゃんを増やすしかない。 そこででてきたのが「シラク3原則」です。
こういう立ち位置は、おそらくフランスでも保守的なのだろうと思います。
そういう人たちが、女性の権利とか婚外子差別の撤廃といった、
おそらく当時のフランスでもリベラルとされたであろう施策に
積極的になったことは、注目したいところだと思います。
このあたりは、フランス人は自国の文化やことばに対する愛着が
強い国民性ゆえ、というのもあるのだろうと思います。
それでも保守的な思想とはあまり相容れないと思われる
家族・ジェンダー政策を推進したのは、フランスの保守派の人たちに
それだけポテンシャルがあったということなのでしょう。
日本の「保守派」は、こういう考えにはなかなかならないのではないかと思いますよ。
彼らは家族やジェンダーに関しても、因習・反動的な「家族のカチ」を
維持するのが「日本の伝統文化を守ること」と信じているからです。
実際日本の「保守派」からは、効果的と言われている少子化対策を
推進しようとする動きは、ほとんど見られないわけです。