男性たちは船が沈む運命を受け入れる」というイメージがあるかもしれないです。
この「難破船上の騎士道」が、じつは幻想にすぎないという調査があるのですよ。
2012年4月なので、すこし古い記事ですがご紹介します。
「難破船上の騎士道はあくまで「幻想」、スウェーデン研究」
この調査は全部で18件の海難事故を調べています。
そしてその大部分において、男性の生存率のほうが女性の生存率より高いのでした。
力の強い男性が弱い女性を押しのけるので、男が多く助かるのでしょう。
みんな生き残りたいので、だれもが「われさきに」逃げようとするということです。
調査対象となったのは、海難事故を起こした
8か国、18隻の船に乗っていた計1万5142人。
生存率を性別で見ると、男性の34.5%に対し、女性は17.8%だった。
中でもエリクソン氏がショックを受けた例として挙げたのは、
1994年にバルト海で沈没し、982人中852人が死亡した
客船エストニア(Estonia)号の事故で、
男性の生存率が22%だったのに対し、女性ではわずか5.4%だった。
女性のほうが生存率が高かった例外的な海難事故は2件だけでした。
そのうちの1件は有名なタイタニック号です。
例外とも言えるその2件のうちのひとつが、タイタニック号だ。
タイタニック号では女性の70%が生き残ったのに対し、
男性の生存率は20%だった。
もうひとつの例は、1852年に南アフリカのケープタウン(Cape Town)近くの
港から出港し、直後に沈没した英軍輸送艦バーケンヘッド(Birkenhead)号で、
この事故では女性は全員助かったが、男性の生存率は33.5%にとどまった。
エリクソン氏によると「海の騎士道」幻想は
このバーケンヘッド号に由来しているという。
これら2件の海難事故は、船長と船員たちが女性を優先的に助けるという
方針を立てていて、力づくで男性の乗客が、女性の乗客より先に
救命ボートを使わないようにさえしていたのでした。
タイタニック号の場合もバーケンヘッド号の場合も、
まず船長が女性と子供を先に救命ボートに乗せるように命令していた。
さらに注目すべきはどちらの事故でも船員たちが武装し、
男性たちを脅して救命ボートに近寄らせなかったという点だ。
「難破船上の騎士道」幻想は、2件の例外のうちのひとつ
バーケンヘッド号の海難事故のお話が独り歩きしたものです。
実際はさきに逃げないよう船員が男性の乗客を押さえ付けたのであり、
女性が多く助かったのは、かなり意図的なものだったのでした。
男が自発的に女をさきに逃がすという「騎士道」のイメージとは
おおよそほど遠いものだったということです。
これはいささか衝撃的かもしれないです。
いざというときは「男は女にやさしくする」なんてことはぜんぜんなく、
男は女を押しのけてでもさきに助かろうとするということですよ。
「他人にやさしくできるのは、自分に余裕のあるときだけ」と
言ってしまえば、それまでなのかもしれないです。
これは難破船にかぎったことではないだろうと思います。
災害とか戦争とかなにか非常事態になったときも、
通常の状況では男が女を率先して助けることはないだろうということです。
それどころか男はわれさきにと自分が助かろうとして、
女子どもを犠牲にすることもあるだろうということですよ。