自民党内の反対派が猛抵抗を始めて早々に難航し、
法務部会で了承にいたらないという事態に陥るのでした。
反対派議員たちの理由には「伝統的な家族制度を崩壊させる」があります。
この「伝統的な家族制度」とはなんなのか?、
そして婚外子の相続差別をなくすことがどうして「家族制度の崩壊」なのか?
という、しごくもっともな疑問を呈するエントリがあります。
「日本の伝統的な家族制度って、いつからの伝統なんだろう」
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この自民党のいう日本の伝統的な家族制度というのがそもそも何で、
婚外子の遺産相続の差別をなくすことがどうして家族制度を崩壊させるとするのか、
良く分からんのですね。
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自民党の反対派が言う「伝統的な家族制度」というのは、
高度経済成長期に普及した「父親が外で働き、妻が専業主婦で、
子どもがふたりという、いわゆる「標準家族」と呼ばれたものです。
彼らは「家族のカチ」と称して、この「標準家族」を後生守り続けることを
なにかとても大事なことだと信じているということです。
エントリの最初のほうで、奇しくもつぎのように書いてあるのですよね。
「まさにそれ」ですよ。
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ただいまの結婚制度と日本の家族のあり方というのは、
ここ半世紀ぐらいの制度であって、日本人の家族観は時代や状況により
大きく変遷してきたというのもまた事実です。
戦後といっても60年ほどであり、それをもって「伝統」というのも辛く、
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ここで「「伝統」というのも辛く」と書いていることが、
ほかならぬ彼ら自民党の反対派にとっての「伝統」だったのでした。
意外と歴史が浅いものを「伝統」と信じているというのは、
「伝統」が好きな人にはよくありがちなことだと思います。
反対派にとって、彼らが信奉する「伝統的な家族」とか
「家族のカチ」というものは、宗教の代わりになっているものと思います。
「伝統的な家族」を維持することが至上命令のようになっているのでしょう。
それで、彼らが信奉する「伝統的な家族」に含まれないものが
導入されようとすると、ただひたすら「家族の崩壊」と叫んで、
教条的に反対することになるのだと思います。
婚外子の相続差別は戦後の新民法のもとでも維持されました。
つまり彼らの「伝統的な家族」の中では、
婚外子と婚内子は明確に区別される必要があることになります。
それゆえ婚外子と婚内子の区別をしない遺産相続は、
彼らの「伝統的な家族」に含まれないので、これを導入することは
無条件で「家族の崩壊」になる、ということなのでしょう。
そうなんですよね。
60年あればじゅうぶん伝統と言えないこともないのですよね。
ところがご指摘のように、「伝統」だと信じている人たちは、
なぜかもっとむかしから続いていたかのように主張するのですよね。
彼らは60年では箔がつかないと思っているからではなく、
本当にわかっていないのだろうと思いますが。
まさに社会保障を削りやすくする「小さな政府主義」のために
憲法24条に「家族のカチ」を入れようとしているのだ、というご指摘がありますよ。
http://taraxacum.seesaa.net/article/314113970.html
この可能性も念頭に置いたほうがいいと、わたしも思います。