タイトルは「婚外子」とありますが、婚外子は関係ないです。
ドイツで未婚の父親が親権を得ることに関するお話です。
「ついに新生児の3分の1が婚外子になったドイツ
旧東独なら61%、でも未婚の父の権利強化には疑問符」
(はてなブックマーク)
いままでドイツでは、未婚の父親が親権を持つことを、
母親から拒否されると、その父親はなすすべがなく、
子どもをあきらめるしかなかったのでした。
ところが今年の1月に法律が改正されて、母親に拒否されても
家庭裁判所に持ち込んで、父親が親権を得るための協議が
できるようになったのでした。
これには契機となった事件があるのでした。
とある男性が、夫のいる女性とのあいだに子どもを作ったのですが、
女性は結局離婚しなかったので、その女性が結婚している夫が
産まれた子どもの父親となったのでした。
(ドイツでも、婚姻している女性が夫でない男性の
子どもを産んだ場合、子どもの父親は生物学的な父ではなく、
婚姻している夫と推定されるようです。)
母親が親権の共有を拒否したのだと思いますが、
くだんの男性は、この件をEUの人権裁判所に訴えたのでした。
その結果、くだんの男性も親権を持つ権利があると判決がくだされ、
これを受けてドイツ最高裁がいままでの法律を違憲と判断し、
法律が改正される運びとなったのでした。
ところがこの法改正が、記事の著者は気に入らないのです。
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いまさら親権を掲げた知らない男が現れて、
「本当のお父さんは、この私です」などと言いだせば、
7歳の女の子は混乱するだけだ。
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などと言うのですが、この女性と子どもの家族を取材して
子どもに訊いたとか、根拠があるのではないようです。
著者が「きっとこうに違いない」と決めつけているだけと思われます。
この家族が実際にどうなのかはわからないですが、
一般的にはたとえば、子どもが自分の出生の秘密を知って、
本当の父親に会ってみたいと考えることも、あるかもしれないです。
なぜ「子どもはかならず混乱する」と断定できるのかと思います。
またこの著者は、「私が思うに、親権をどうしても
父親と共有したくない女性には、必ずや理由があるはずなのだ」
とも書いていて、母親が父親と親権を共有したくないときは、
かならず母親が正しいと決めているようです。
これもたとえば、子どもは父親と暮らしたがっているが、
母親が父親のことを嫌いで、意地悪をして子どもと父親を
会わさないでいる、というケースはありえないのでしょうか?
父親が親権を共有したほうが子どものためかどうかは、
ケースバイケースにすぎないと言えます。
だからこそ、「子どもの幸せが侵害されない」と
母親の主観ではなく第三者的に判断できるかどうかを、
家庭裁判所でそのつど審査することにしたのでしょう。
くだんの男性が親権を得たいと思うのはとうぜんだし、
EU裁判所に訴えたことは、当然の権利を行使したと思うし、
EU裁判所やドイツ最高裁の判断も、妥当だと思います。
けしからんのは、「実の父が出て来たら子どもが混乱する」とか
「親権を共有したくない母親はかならず正しい」などと
外から勝手に決めている、この著者だと思います。
「実の父が出て来たら子どもが混乱する」のような
外からの決めつけは、「別姓夫婦の子どもはかわいそう」とか
「同性カップルの子どもはかわいそう」と、
その子どもが置かれている実態も知らずに外から決めつける
選択別姓や同性結婚の反対派と共通するものがあると思います。
はてなブックマークを見ると、EU裁判所やドイツ最高裁を支持して、
この著者がおかしいとする意見がほとんどです。
わたしとしては、ブックマークを付けた人たちの
感覚が健全であることに、安心をするところです。
ついでながら、この記事の1ページ目は婚外子のお話ですが、
父親が親権を得るお話とはぜんぜん関係ないと思います。
記事を見たかぎり、問題の子どもは法的にも女性の夫の子と
なっているとあるので、婚内子と思えるからです。
なぜ見出しに「婚外子」と書き、はじめの1ページを使って
ドイツの婚外子の事情についてお話をするのかと思います。
いたずらに婚外子差別をあおりかねないと思いました。
選択的夫婦別姓制度を導入すれば、ある程度はこの問題は解決できますが、その場合でもやはり事実婚を選ぶ夫婦はあるわけで、必要な改革だと思いますね。
でも、婚外子差別撤廃ですら反対する非常識な人がいるくらいですから、難しいでしょうね。
ご指摘の通り、事実婚は片親親権なのですよね。
でもあまり問題になることはないですね。
本来ならもっと大事なことだと思います。
>その場合でもやはり事実婚を選ぶ夫婦はあるわけで、必要な改革だと思いますね
ヨーロッパの民主主義国によくある、パートナーシップ法を
導入すればいいのだろうとは思いますが、
日本はこれも理解がほとんどないですね。
それと日本では離婚すると片親親権となる、という問題がありますね。
ハーグ条約に批准すれば、それにともなって国内法も
整備することは予想されますが。