2012年11月28日

戸籍ロンダリングの実態

「「戸籍ロンダリング」の実態」なんて、どういうことかと思う
ことばの入った見出しですが、結婚や離婚、養子縁組を
利用して改姓し、同一人物性の識別をむずかしくして、
犯罪の隠れ蓑にするというお話です。

「美代子容疑者らの「戸籍ロンダリング」の実態 裏社会でポピュラーな手口」

 
結婚や離婚の改姓を利用して保険金詐欺を働く
というのは、前にお話をしたことがあります
一時話題になった、角田美代子が中心の尼崎の連続変死事件も、
結婚、離婚、養子縁組を利用した改姓を繰り返していたのでした。
それで足が付きにくかったのもあるようです。

こうした改姓の悪用が起きる背景には、戸籍の名前が正しい名前
という社会通念が、強いこともあるのだろうと思います。
戸籍の名前だと言えば(戸籍の名前だと思われれば)信用される、
ということを、逆手に取られるのだと思います。


そういうこともあってだと思いますが、暴力団関係者も、結婚、離婚、
養子縁組を利用した改姓を、さかんに悪用することがあるそうです。
記事では、3つの例があげられています。

1.多重債務者の破産事実の消去
2.ホームレスや日雇い労働者からの戸籍の買い取り
3.生活保護の受給のため


多重債務者が破産して免責が取れると、
結婚改姓によって、破産した事実を消せるようになっています
これは多重債務者が立ち直る際によく利用されます。
暴力団関係者は、はじめから借金を踏み倒すつもりで、
意図的にこれをやることがあるわけです。

ホームレスやネットカフェで暮らす日雇い労働者から、
数万円で戸籍が買えるというのは意外でした。
繁華街には突然消えても誰も気にしない人は、
たしかにたくさんいるのだろうと思います。
それでも戸籍は、日本でもっとも信頼される身分登録とされています。
こんなかたちで「横流し」ができるとは思わなかったです。
戸籍制度も多分にずさんだ、ということでしょうか。

生活保護を受給するために、改姓を利用することもあるそうです。
こうした場合、「生活保護の不正受給はケシカラン」と
糾弾する人たちは出て来ても、「結婚改姓の不正利用は
ケシカラン」と言う人は、なぜか出て来ないようです。

「目的はよこしまでも、結婚改姓自体は合法だ」と
言うのかもしれないですが、それなら生活保護の受給自体も、
資格を満たしたもので合法で、なんら問題のないことです。
このあたりは、「生活保護は受給すること自体が悪」、
「結婚や離婚で改姓するのは正しい」という
社会通念が反映されているのだろうと思います。


posted by たんぽぽ at 23:30| Comment(4) | TrackBack(0) | 民法改正一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
記事にコメントを書いて、エントリを作ってみました。

残念なことですが、昔からずーっと続いていることなんです、それ。売る方も買う方も、一定のニーズがあるんです。私の知っているやくざ屋さんは幼い私を目の前にそれをやっていて、それを「子どもだからわからない」と堂々と見せてしまっていました。20年以上前の話です。

身分を失った人たちは、もちろん困窮者で先を考えることもできませんから(というかメンタルが先におかしくなるんだと思います)、生活保護を受けることも無く、「身元不明の遺体」として後で発見されるそうです。

身分を売る人々のうちには、「もう後先がないから、最後にこの金でぱーっと遊んで死ぬんだ」と…。

身元保証人や連帯保証人がいないと、誰でも「自分の身分を売る」人になりえます。自分を証明する書類をすべて失うと、役所からも手助けが無かったという話ですし、生活保護を受けるためには当然のように身元を証明する必要があるそうなので、今もそうなのかもしれません。

かつて、イエを追い出された人が生活保護を受けようとしたら、自分を証明するものも無く、記憶にあった名前や住所、周囲の環境などの情報をもって「証明」することができたそうですが、実は…そのイエの人に既に死亡届が出されていたという例を思い出しました。私はその話を聞いて泣いたものです。
Posted by mmm at 2012年11月30日 21:26
mmmさま、いらっしゃいませ。
こちらにコメントありがとうございます。

戸籍を暴力団に売った人は、そのあとどうなるのか、
エントリでリンクした記事の「続き」みたいなお話ですね。

>生活保護を受けることも無く、「身元不明の遺体」として後で発見されるそうです。

戸籍を売った人は、どうなるのかと思ったのですが、
人知れず死んでいくことが多いのですね。
「突然消えてもだれも気にしない」人たちなので、
彼らの死は放置されるのもあるのでしょうね。

>「もう後先がないから、最後にこの金でぱーっと遊んで死ぬんだ」

そもそも戸籍を売るって、動機がわからなかったのですが、
生活に希望がないので、お金と引き換えにするのですね。
そして他人の戸籍を買い取りたい暴力団がいて、
需要と供給が一致してしまうわけだ。


>自分を証明する書類をすべて失うと、

自分の身分を証明するものがなければ、
生活保護のような手当ては受けられないでしょうし、
役所も基本的になにもできなくなると思います。

>そのイエの人に既に死亡届が出されていたという例を思い出しました

長い間行方不明になっていると、死亡届けが出せると思いました。
いちおう縁者がいて、どこへ行ったのか消息がわからないので、
死んだことにしてしまうのでしょう。
Posted by たんぽぽ at 2012年12月01日 22:31
夫婦別姓だろうが同姓だろうが戸籍を悪用する人はするんですよね。
Posted by 改姓した男の人 at 2023年05月04日 00:05
改姓した男の人さま、

「悪用する人間」に関しては、
夫婦同姓だろうが夫婦別姓だろうが、
そういうことをする人は
いるだろうと思います。

「技術的なこと」に関しては、
悪用されるのは苗字の変更、
つまり夫婦同姓の強制が
利用されることになるのでしょう。
Posted by たんぽぽ at 2023年05月04日 16:42
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