現状でできることとして、導入しないよりはよい」
という観点で導入されたと言えると思います。
問題はあるでしょうけれど、「よりまし」で判断しているわけです。
>女性専用車両を設置する意義
女性専用車両を設置する意義は、わたしが考えるに
大きくふたつあると思います。
ひとつは、男性から女性への痴漢が圧倒的に多いので、
これを軽減する、という現実的な目的だと思います。
もうひとつは、性犯罪という差別が、男性というカテゴリに
属している人か、女性というカテゴリに属している人へ
なされることが多い、という理念的なものだと思います。
それゆえ、女性カテゴリに属する人を、
特別に保護する必要が出て来るのだと思います。
反対派からよく出て来る「痴漢の責任を男性全員に
押し付けている」とか「男全員を痴漢とみなしている」というのは、
差別がカテゴリー間の関係であることが理解できず、
個人のふるまいの集積としか思っていないことの
現れとも言えるかもしれないです。
「差別のメカニズム」
男性は、「男性カテゴリに属している」というだけで、
差別に加担していると見られるおそれがあるわけで、
それがいやなら、女性専用車両の場合、
男性だけど差別に反対していることをしめす、
すなわち専用車両に理解を示し、痴漢する男性に
批判的になることだと思います。
女性専用車両反対派は、男性全員が差別しているかのように
見られるのがとてもお嫌のようです。
しかし、そのような態度では、
「差別に加担しているのではないか」という不信感を
さらに持たれるだけだろうと思います。
>男性専用車両は必要ない
「女性専用車両だけでなく男性専用車両も作れば
差別にならない」とか、「痴漢えん罪を恐れる
男性の対策にもなる」という意見もあるようです。
わたしに言わせれば、男性専用車両は必要ないと思います。
女性専用車両だけが設けられるのは、
「男性から女性への痴漢」が圧倒的に多いので、
真っ先に対処が必要、という数の問題になるでしょう。
痴漢えん罪も「男性から女性への痴漢」の数にくらべると
ずっとすくなくなっています。
それから、えん罪の可能性は、女性専用車両の導入によって、
ある程度対処できているとも言えます。
これらは、「男性への痴漢」や「痴漢えん罪」は
少数だから無視してよい、ということではないですよ。
少数派に拘泥しすぎて「サバルタン探し」化して、
足を引っ張るだけになって、結局なにも解決しないという
事態を避けたいという、実用的な問題ということです。
>悪いのはだれか
女性専用車両が作られる原因は、もちろん痴漢です。
あたりまえのことですが、女性専用車両の反対派は、
一般にこの認識が弱いようです。
彼ら反対派は「男全員を痴漢とみなしている」と嫌がるのに、
痴漢を批判することは(痴漢といっしょに見られないための
もっとも効果的な方法なのに)あまりしないようです。
女性専用車両に不満があるなら、本来の原因である
痴漢に文句を言うことだと思います。
女性専用車両の反対派は、しばしば鉄道会社や女性を
激しく攻撃しますが、これは本来「お門違い」でしょう。
とくに女性は、いつ痴漢にあうかわからない
状態にさらされている、潜在的な被害者です。
それにも関わらず女性を攻撃する、というのは、
性犯罪を被害者のせいだとする、
「被害者落ち度論」の一種になると言えます。
>だれが差別されているのか
女性専用車両というのは、エキセントリックで前時代的だし、
かならずしも好ましいとは言えない方法です。
でも、そうまでしないと痴漢の対処がしきれないわけで、
日本社会はそれくらい痴漢が多い、ということを
しめしていることになります。
わたしがはじめて、女性専用車両のことを聞いたとき、
「日本はこんなものが必要になるくらい
痴漢が多いのか」と、なげかわしく思ったものです。
ようするに日本の女性は、それくらい深刻に、
日頃から性犯罪に晒されている、ということです。
女性専用車両の存在とは、それだけ女性が差別される社会だ、
ということをしめしているのだと、わたしは思います。
関連エントリ:
「女性専用車両の反対派」